ある日、国語の授業で…

日々のマンツーマン授業の成果を実感する出来事がありました。中原中也の詩「月夜の浜辺」の朗読に中山さんが指名された時のことです。

『月夜の晩に、拾ったボタンは指先に沁み、心に沁みた。月夜の晩に、拾ったボタンはどうしてそれが、捨てられようか?』

先生「中山さん、最初の頃と比べたら、ものすごく読み方が上手になられています」
中山さん「学校で読んだけんです」
先生「そうそう。漢字も覚えたし、私が『優しく読んでください』って言ったら、そんな感じで読んでくださったと思います」

教室から拍手が起こります。さらに先生は、詩の中に出てくる「沁みる」について、みんなに質問しました。

先生「指先に沁みる、心に沁みる…沁みるってどんな感覚ですか?どういう時に使います?」

誰もなかなか手を挙げません。すると、中山さんが思い切って…。

中山さん「例えば、綺麗な女性がいて、手を触って。手をふれた時に沁みる。手が触れただけで『沁みる』感じ」
先生「ああ~何かこう、『伝わってくる』という感じですかね?自由に考えていいですよ、正解、間違いはないので」

先生のコメントを受けて、中山さんはいつもより照れくさそうな笑顔を見せました。その向上心は、まだまだ尽きません。

中山さん「もうちょっと、はっきりと物を言えるようにしたいと思います。しゃべるときとか、何でも恥ずかしがらないで、やれるようにしたいと思います」