「働きがいと経済成長」そして「陸の豊かさ」を守るー、
ピンチに陥った八ヶ岳山麓の農業大学校の新たな挑戦と改革です。

午前8時半、丸山侑佑校長が出勤してきました。校長室に入ると、株価の画面を立ち上げます。
丸山侑佑校長:「財務の責任者だったんで、癖が抜けなくて必ずチェックします」
丸山さんは企業の人材採用や販売促進をITで支援する年商200億円の上場企業「ポート」の取締役副社長、つまり、IT企業の経営者でもあります。
この4月から自ら手を挙げて校長になりました。
丸山侑佑校長:「経験と身なり含めて一般の校長像と違うけれど、とにかくやってみようかって。人生38年間で一番の決意です」

丸山さんが校長を務める八ヶ岳農業大学校、旧八ヶ岳中央農業実践大学校は戦前から農家を育ててきた実践的な専門学校で、80年以上の歴史があります。
食料の自給率を高め、景観や自然環境を守り、持続可能な社会を守るためには欠かせない農家の育成。原村にある267ヘクタールの広大な土地で、現在も酪農、養鶏、それに野菜と花の栽培を教えています。
学生:「高原野菜を育ててみたくて、実習がメインの学校に行きたくて楽しそうだなと思ってここに決めました」
しかし、学校は補助金のカットと新型コロナの影響で借金と赤字がかさみ、23年度には破綻寸前となっていました。
再建が始まったところで、原村に移住していた丸山さんに声がかかり、運営母体の法人の理事として学校に関わることになったのです。
丸山侑佑校長:「公益財団法人であろうと学校であろうとそれは一つの事業ですよ。学校をないがしろにするつもりは全くないし、むしろ学校としてこれからも誇り高く発展していきたいと思いますけど、でも事業として成立してないのは違う、単なる言い訳」
丸山さんが真っ先に手掛けたのは、再建のシンボルとなり収益を生む直売所の改革でした。
丸山侑佑校長:「何が一番みんなの熱量上げられるかなと思ったら、僕的には牛乳だったんですよ」

八ヶ岳農業大学校では、80頭の牛を飼い、学生も世話をしています。しかし、コスト削減のため、校内での牛乳の生産をやめていました。
丸山さんの改革は、牛乳から始まりました。
丸山侑佑校長:「酪農の職員から言われたのは、うちの生乳からの牛乳を学生に飲ませたことがないんだと。畜産業やってるのに自分たちが飲食せず売るのはどうなんだろうと」
牛乳の生産を再開し、直売所で販売。地元の旅館でも出してもらうようになると、観光客も直売所に立ち寄るようになりました。

客:「味の濃さ、まろやかさ、他で売っている牛乳と次元がちがう。ぜひこの牛乳を手に入れて帰りたいと思いまして」