今回で3回目となる、シリーズ特集『罪と償い』。導入まで1か月あまりとなった拘禁刑についてです。新しい刑務所の在り方について、模索が続く中、ヒントとなる“対話”という取り組みが、北海道日高地方にある施設で、40年以上も続けられています。
◇《刑務官の葛藤「甘やかしているだけではないのか…」》
刑務官
「本当にこれで合っているのか。これはただ甘やかしているだけじゃないのか、本当に彼のためになっているのか」
受刑者を“懲らしめる”と書く懲役刑から“立ち直らせる”拘禁刑へ―。現場で刑務官も葛藤する中、新たな刑務所の在り方をめぐる模索が続けられています。

北海道の月形刑務所です。刑務官による受刑者への接し方は、対話を重視した形に変化しています。
刑務官の号令が、刑務所内に響き渡ります。刑務作業の手を止め、受刑者たちが移動し始めます。月形刑務所の第15工場では月に1度、グループミーティングが開かれます。
刑務官:「自分の家族が同じような目にあったときどう思うか?」
受刑者:「加害者がどう考えているのか聞きたいんだね」
別の受刑者:「被害者としては加害者の気持ちを聞きたい…なるほどね」

◇《受刑者に問いかけ、対話を重視する刑務官》
この日は“犯罪被害者の気持ちを考える”がテーマです。受刑者たちの意見を刑務官がさらに掘り下げる対話形式で進みます。
受刑者:「被害者にとっての本当の反省だったら、加害者も自分の大切なものや大切な人、何かを失うべきだと思います」
刑務官:「なんでそう思う?」
受刑者:「被害者の気持ちに寄り添うからです」
刑務官:「被害者の気持ちに寄り添って、自分も同じ目に遭えばいいと?」
受刑者:「それが本当の反省だと思います」

月形刑務所が、この取り組みを始めたのは去年2月のこと。拘禁刑の導入に向けた、改革の一つです。刑務所では試行錯誤が続います。
受刑者:「今まで刑務官というのは、やっぱり受刑者に対して一線置いていると、違うものだと思っていましたけれど、同じ人間だったということを感じました」