「信州の戦後80年つなぐ、つながる」です。今回は、小学校の教材が語る戦争です。

田辺智隆さん:「ここに博物館ができたのはこの化石が見つかったからなんですね。今では絶滅してしまったシンシュウゾウ」

今から300万年程前に長野県内に生息していたとされるシンシュウゾウの下あごの化石。

展示されているのは、この化石が発掘された長野市戸隠の戸隠地質化石博物館です。

2006年に閉校した小学校の校舎を活用し、この地域で見つかった化石や地形の成り立ちを説明する資料を主に展示しています。


田辺さん:「戸隠が海の底だったんだから、長野市みんな海の底だよという話をすると、みんなえーって驚くんですね」

この博物館に勤めて35年の田辺智隆さん。分かりやすくておもしろい解説が人気の名物学芸員です。

階段を降りて次の部屋は…。

田辺さん:「茶臼山動物園で亡くなったやつとかそれを全部骨にして」

動物園から譲り受けたキリンやゾウを、自分たちで標本にしました。

田辺さん:「ここへ運んで、プールにつけて、骨にしました。だってこんなの買おうと思ったら高くて買えないっすよ」

来た人が気兼ねなく、手に持って重さを感じられるよう、あえて無造作に展示してあるとのこと。

元は小学校の教員だった田辺さんが大切にしているのは、モノに触れて想像する力。

田辺さん:「モノって面白いので、モノをよく見るってことが好奇心を育てるんじゃないか」

その思いから、博物館にはいつしか、地質や化石以外にもいろんなモノが集まってくるようになりました。


田辺さん:「これが御蚕様の模型なんですが…これは中が見られるようになっています。これが長野県を支えたんだよって」

年季が入ったカイコの大型模型は、昭和初期、蚕糸王国として長野県が栄えた歴史をものがたります。

(どこから来たんですか?)
「これは共和小学校、新しい校舎作った時に今までの古いものみんな捨てるって言ったので」

廊下に所せましと並ぶ謎の瓶や模型は、全てもらいもの。

田辺さん:「買ったんじゃないですこれは、いろんな統合になったり廃校になったりする学校を回って理科室から回収してきたものなんですよね」

中山間地の過疎化と少子化で、小学校の統廃合が進む中、校舎の取り壊しの際に廃棄となった教材を、「もったいない」と譲り受けてきた田辺さん。

教材は、その時代を語る貴重な資料だといいます。

田辺さん:「おもしろいのはこの棒ですね。何の棒か分からなかったんですよね。お年寄りに聞いたら分かりました、これ、手りゅう弾投げの練習に使っていた棒だったんですね。戦時中に軍事教練というのがあって、この重さってちょうど手りゅう弾の重さになっているんですけど、それを遠く正確に投げる練習をしたんだと」

廃棄する予定だった木の棒が、戦争中の軍事教育の教材だと分かりました。

田辺さん:「これも面白いんですけど。空襲警報って持ち運びができるように」

アルミ製の携帯式メガホン。

田辺さん:「これも学校に残っていてこんなものは捨てちゃうからっていうから」

他にも、鉄兜や携帯用の提灯など、旧日本軍のものとみられる軍用品が閉校する小学校の資料室から次々と見つかりました。


さらに…。