■県民に聞いてみた! 知ってる?電話de詐欺
では、千葉県民は「電話de詐欺」と聞いてピンとくるのか、実際に聞いてみた。

女性(19歳)
ーー“電話de詐欺”って知っていますか?
「知っています」
ーー何をきっかけに知りましたか?
「テレビで取り上げられていたり、防災無線で流れていたりしました」
女性(85歳)
ーー“電話de詐欺”って知っていますか?
「知っています」
ーー何をきっかけに知りましたか?
「移動交番でチラシを配っていました」
(※移動交番=警察官が乗車する移動交番車を設け、パトロールなどを行う)
ーー“電話de詐欺”という言葉は聞いてピンときますか
「ピンときます」
知っているという人の中にはこんな意見の人も…
男性(20歳)
ーー“電話de詐欺”という言葉は伝わりやすいと感じますか?
「電話だけでなく最近はネットの詐欺もある。ご時世に合わせて“スマホで詐欺”とか変えていくのもい良いのではないか」
老若男女10人に聞いたところ、9人は「電話de詐欺」という言葉を知っていた。「知らない」と答えた女性(75)は、「特殊詐欺なら知っている」ということだった。この女性は過去に、ショートメッセージを通じお金をだまし取られる被害に遭い、それをきっかけに特殊詐欺という言葉を知ったという。同じく、電話de詐欺という言葉はイメージが伝わりやすいですか?と尋ねると、「ピンとくるとは思う」と答えていた。
話を聞いて一番に感じたことは、意外にも「電話de詐欺」という名が浸透し、「イメージがつきやすい」という声が多かったということだ。千葉県が、2019年に県民3000人に行った県政に関する世論調査でも、「電話de詐欺を知っている」と答えた人は62.8%と全体の6割にのぼっていることも明らかになっている。
■名称変更の効果はいかに
名前が浸透しているのであれば被害も減るのではないか?名前が決まった2015年以降の被害の認知件数や被害額に変化はあるのか、調べてみた。

被害が1件でも減ってほしい、そんな思いを込めてつけられた経緯とは裏腹に、認知件数および被害総額は一概に減少しているとは言えない。
千葉県警の担当者はこう話す。
「名前を知り、手口を理解していたとしても被害に遭う人は少なくはない。手口が様々であることから、具体的な手口を知らない人もいる」
なかなか被害が減らない実態に対しては、「どこか他人事だと感じ、『自分は大丈夫』という認識を持ってしまう人がいる」と警鐘を鳴らした。
たしかに、話しを聞いた千葉県民からは、
「お金のある人が引っかかるイメージ)(85歳女性)
「被害に遭う対象は高齢の方という印象。うちの親は大丈夫だろう」(50代女性)
「年配の方に、言葉の意味が伝わればいいんじゃないか」(40代男性)
といった声が聞かれていた。
「電話de詐欺」に名前を変更したことが被害の減少につながっているか、について担当者は、「根拠とするような材料がなく、名称を変えたからといって影響するとは言い切れない」と話すものの、変えたことについては「県民の関心を高めるためにも、必要なことだった」と振り返った。今後も「電話de詐欺」の名前を使っていくという。
■なりすまし、ニセ電話、お金…
ちなみに、全国に目を向けてみると、特殊詐欺を独自に言い換えている県がいくつか見つかった。(各県警のホームページより)
福島:なりすまし詐欺
茨城・岐阜・福岡・佐賀・長崎:ニセ電話詐欺
山梨:電話詐欺
長野:電話でお金詐欺
山口・鹿児島:うそ電話詐欺
熊本:電話で『お金』詐欺
いずれも、「電話」「ニセ」「お金」といったキーワードが目立つ。やはり、特殊詐欺の手口として電話が多く使われていること、県民に特殊詐欺のイメージをわかりやすく伝えることが狙いのようだ。
■「ひたすらチラシ配り」被害を防げた事例も
被害を未然に防ぐことができた事例もある。
実は冒頭にあげた船橋東署は、今年の夏にも住宅街で、注意喚起のチラシを配っていた。それは、被害が多く発生している地域の約1500世帯を訪問して、ひたすらチラシを配り、「目に見えるところにチラシを貼って欲しい」と呼びかけるものだった。警察によると、呼びかけ通りチラシを貼った家庭で、詐欺だと気付き、お金をだましとられずに済んだ事例があったという。
さらに、千葉県警は、電話がかかってくるとメッセージが流れ自動で録音が始まる機器を、400台無償で配付している。実際に使っている家庭にアンケートをとり、機器の導入により迷惑電話が減ったのか、といったことなどを検証していくという。
ただ、犯人は日々あらゆる手口を使い、金をだまし取ろうとしている。実際に被害に遭う人がいる限りは、「電話de詐欺」の恐ろしさにまだ気付いていない人がいるということだ。
年間、数十億円単位で推移する被害に目を瞑っているわけにはいかない。千葉県警は、不審な電話に出ないよう留守電機能に設定するなど、「電話de詐欺は電話de対策!」と呼びかけている。
TBSテレビ 報道局社会部 千葉担当 石田夕希