安曇野市堀金(ほりがね)で米を栽培する、「あづみのうか浅川」。
今月4日から始めた、稲の苗を作るための種まき。
機械を使うことで労力を削減し、効率よく作業が進められます。
ただ、全体的な生産コストは右肩上がりだといいます。
■あづみのうか浅川 浅川拓郎さん:「肥料の関係はだいぶ上がっているし、あと燃料代も上がってるしあとはやっぱり人件費もね」

機械や設備を動かすための電気代や燃料代は軒並み値上がりしているほか、肥料代は5年前と比べ1.5倍に。しかしこれまでは、なかなかコストを価格に転嫁できない現状が続いてきました。
農林水産省の試算によれば、おととしの米60キロ当たりの生産費は全国平均でおよそ1万6000円。一方、取引価格の平均は1万5000円余りと、採算割れの状態でした。
■あづみのうか浅川 浅川拓郎さん:「米の値段ももう下がり基調でずっときていたので、コロナのときに(米が)すごく余ってというところだったからなかなかやっぱり値上げっていう部分の話すらもしづらい部分もあったんですけど、地域の農地を守ってるって使命感を持ってみんなやってると思うんで、そこは何とか今まで苦しみながらも耐えてきたっていう感じですかね」
そうした中で起きた、今回の“米騒動”。
価格がある程度引き上げられること自体は、生産者にとって前向きなことと浅川さんは捉えています。
ただし、不安や懸念も。
■あづみのうか浅川 浅川拓郎さん:「僕らも電話で(売れないですと)お断りするのも辛いし、じゃあ、ないからと言って海外のお米を輸入してまでってなっちゃうと…」
信州産のおいしい米を、しっかりと食卓へ届けるために。
浅川さんは、来月上旬から田植えを始めます。

今年は、他の農家から新たに預かった農地を活用して、主食用米の作付面積を去年よりも3ヘクタール=1割ほどは増やす計画です。
■あづみのうか浅川 浅川拓郎さん:「この安曇野の田園風景を守りたいっていう思いでお米を作っていて、とれたお米を買ってもらえることがその地域を守ることにもなりますし、結果的に将来的に自分たちが食べていく食料を守ることにもなるのかなというふうに思うんで」
コメを巡る全国的な混乱の中、生産者は冷静に現状を見据えています。
全国的にも今年、主食用の米の生産量は「微増」の見通しです。
農林水産省のまとめでは、全国の作付面積の見通しは128万2000ヘクタールで、去年の実績と比べ1.8%ほど増えています。
また、各都道府県で決める生産量の目安値についても、長野県は6年ぶりの引き上げとなっていて、去年より1.5%多い17万9300トン余りに設定されています。
もっと大幅に増やせないのかと感じる方もいるかもしれませんが、実は、以下のような理由で簡単には増産できない事情があります。

〇生産コストの上昇 〇労働力や農地の不足
〇苗を育てるハウスや収穫した米を保管するための倉庫などの設備のキャパシティの問題 〇供給が増えた場合の価格暴落の懸念、などが挙げられます。
日本人の主食のコメには流通の確保と価格の安定が求められますが、同時に、それを支えてきた生産者の現状についても考えていく必要があります。