山口県岩国市行波に伝わる国指定の重要無形民俗文化財「岩国行波の神舞」が6日、6年ぶりに奉納されました。



令和になって初めての奉納。

地元の人たちの手によって230年、受け継がれる神事です。

岩国行波の神舞は、6年おきに奉納されています。

地元では数えで「7年に一度」と言い習わされています。

最初に奉納されたのは1791年との記録が残り、230年以上の歴史があります。

舞い方を変えず伝統をよく伝えられているとして、1979年に国の重要無形民俗文化財に指定されました。

地区の保存会で受け継いでいますが、少子化で伝統の継承が危ぶまれるのは行波も例外ではありません。

12年前、小学生のときに参加した中都優太さんと恵佑さん兄弟。

進学で行波を出ましたが、帰省して参加しました。

兄 中都優太さん(19)
「12年前は小学1年生から2年生になるときで、なんかよく分かんないけど出てるみたいなそういう感じだったんですけど、今は岩国行波の神舞をやってることに対して誇りを持って、しっかりとやりがいを感じながらできてると思います」

弟 中都恵佑さん(18)
「神舞はやっぱり行波に帰って来る理由にもなりますし、大事な存在ですね」

伝統を守ることに使命も感じています。

弟 中都恵佑さん
「ずっと舞っていく、がむしゃらに舞っていくそれだけだと思います」

兄 中都優太さん
「なくしてしまうことが1番よくないかなと思っているので、やれる最大限の範囲で、そのままやっていけたらと思います」

本祭ではおよそ15時間かけて12の演目が奉納され、大勢の観客が詰めかけました。

観客
「すごいですね。総力でびっくりしました。集落の力っていうのですかね」
「もうなんだか日本人らしくなくなってるから、日本人としてのね気持ちっていうのをずっと心の中に持ってもらいたいなと思います」

最大の見せ場「八関」は、舞い手が高さ25メートルのマツに登り、頂上から綱を伝って逆さになり地上に降りる「松登り」です。

舞い手は、消防士の江木賢宏さん。

12年前の31歳、6年前の37歳、そして今回と松登りを3度務めてきました。

今回も7キロ減量して大役に挑みます。

松登りは今回が最後と決めている江木さんは、慎重に足場を確認しながら上を目指します。

午後5時を過ぎて太陽が山陰に隠れ肌寒さを感じる中、会場を埋め尽くした観客が固唾をのんで見守ります。

無事に頂上に到達、まつられた「三光」を破りました。

舞い手が落とすマツの枝を手にできれば、御利益があると言い伝えられています。

綱を伝って降りる途中、握力を確かめながら綱を握ります。

地上に降り立つと惜しみない拍手が送られました。

江木賢宏さん(43)
「ほっとしたとか安心したとかそういう気持ちになるのかなと思ったんですけど、そういう気持ちじゃなくてですね、ちょっとモヤモヤしたようなっていう、ちょっと今までにない気分なんですよね」

やりきったと言いながらことばにつまります。

江木賢宏さん
「行波で生まれ育ってですね、神舞と一緒に成長してきました。みなさんのアドバイスやたくさんの人に支えてもらって、本当に行波で育ってよかったなと思っております」

次の世代につなげていく使命も感じています。

江木賢宏さん
「限界来てるんだなと、集落の過疎化がですね。でもその中でも240年とかずっと続いているこの神舞をいかに継承していくのかという。でも、もう無理はできないっていうのもありますので、そこを今から模索しながら、僕もできる限りのことをお手伝いさせてもらえたらと思っております」

6年に1度サクラが満開を迎えるこの季節に、かがり火をともし続ける。

行波の人たちの願いです。