燃料や資材の高騰で打撃を受けている農家を支援したり、農業を学ぶ高校生を消費拡大で後押しする新たな取り組みが始まっています。
大分市でイチゴの栽培を行っている農家の中尾晶さん(39)は、異業種から農業に参入して2022年で7年目となる若手の生産者です。
20アールの畑でベリーツやゆふおとめを育てていて、例年11月から収穫シーズンに入りますが、今ある問題に悩まされています。

(イチゴ農家・中尾晶さん)「始めたころの燃料費とかを考えると5~6割とか増えています。去年の分から今はそういう状態。全然負担は大きくなってきていますね」

長引く原油価格の高騰により経営の負担が増え、他にも肥料やビニールなど栽培に必要な資材も値上げが相次いでいます。こうした負担を販売価格に全て転嫁するわけにもいかず、事業の安定化に必要な収益を確保することが徐々に難しくなっています。
(中尾晶さん)「節約とかが頭をめぐるときはあるんですけど、逆にそれをしちゃうと自分のトータル的な収量の確保につながらないので。燃料が上がった分高く売りたいという気持ちももちろんあるんですけど、手に取りやすい価格帯でなおかつ負担のないような感じで出せればいいなと思っています」
負担の増す生産現場を支えるためJAグループが2021年から進めているのが「国消国産」の取り組みです。

(JA全農おおいた営農開発部・梶原敏弘次長)「安い外国産っていうのもありますけど、国で食べたり、消費したりするものは日本で作りましょうというような運動です」

国の調査によりますと、日本の食料のおよそ6割を輸入が占めています。コロナ禍を受けてJAグループでは食料自給率を高め、国内の農業を後押しする新たな「国消国産」の取り組みとして産直通販サイトでのキャンペーンをスタート。全国のおよそ4000品目を対象に送料を無料にして消費拡大を図ります。
(JA全農おおいた直販開発課・一法師菜穂さん)「もっと多くの人に国産のものを消費していただくきっかけがまず重要だと思うので、そのきっかけ作りが送料無料で行えるのではないのかと思っています」

一方で次世代の農業を担う高校生に目を向けた取り組みも。竹田市の久住高原農業高校では生徒の3割が東京や大阪など県外の出身で農業を実践的に学んでいます。
(生徒)「専門的なことをたくさん実際に自分たちでやったりして学べるので、技術が身についているなって思います」「今後も大学とかに進学してより農学を学んだあとは自分で農場などを開いて農業をしていきたいなと考えています」

JAグループ大分では若い生産者を増やす独自の試みとして県内の高校生が生産した農産品や加工品を全国に届ける特設ページを開設しています。
久住高原農業高校では10月収穫した新米を出品します。ふだんは道の駅など地元でのみ販売しているため、今回の全国展開は生徒たちにとって大きなモチベーションにつながっています。
(生徒)「自分たちが作ったものをみなさんに食べてもらえるのはものすごく嬉しいことです」「おいしいとか言ってもらえるとそれを聞けたら私たちもまた大変だけどお米作りがんばろうって思えるなって」

高齢化や担い手不足に加え燃料や資材、肥料の高騰など新たな課題も生じる中、国産の消費をさらに拡大することで農業の未来に突破口を見出そうとしています。