原発事故による避難指示が続く地域では、ふるさとの除染や原状回復を求めて、裁判を戦っている人たちがいます。福島県の浪江町津島地区の住民が国と東京電力を訴えた裁判で、伝統芸能の継承を担ってきた男性が、意見を述べました。法廷で語った故郷への思いと、それを傍聴した若者の思いとは…。

3月7日の仙台高裁前。浪江町津島地区の住民と、その支援者たちが集まりました。

津島訴訟原告団・今野秀則団長「本当に私たちは『ふるさとを返せ』と戦っていますけど、実際的には失ったも同然の状況なんですね」

いまも大部分が帰還困難区域の津島地区。住民は、ふるさとの原状回復を求めて、
国や東京電力を訴えています。この日、法廷で意見を述べるのは、南津島の住民・三瓶専次郎さんです。

専次郎さんは、南津島郷土芸術保存会の会長として、原発事故の後、危機的な状況にあった地元の田植踊りの継承に奔走してきました。

三瓶専次郎さん「みなさんの思いを、何とか原発事故の裁判に、私の思いを込めて
、津島の復興、そして我々が津島にいつ戻れるかわかりませんが、国に、東電に我々の思いを強く訴えていきたいというふうに考えています」

裁判には、ともに田植踊りの継承活動を担ってきた仙台市の東北学院大学の学生と教員も駆け付けました。

東北学院大・今野実永さん「私がこの活動を始めようと思ったきっかけは、地区の人たちに小さい頃からずっとお世話になってきた思い出がたくさんありまして、原発事故後、そういった環境を失ったときに、あのとき津島はよかったなとか、あんなに温かかったコミュニケーションがとれないのかと。すごい心に穴が開いたような気持ちに襲われていた時期がありました」