「100人婚」も可能? 事実婚のメリットとは
従来の結婚制度にとらわれず、自由な形でパートナーシップを築く結婚観に対する肯定的な見方も増え、法律婚にこだわらない多様な価値観は受け入れられつつもある。事実婚を選ぶメリットやデメリットについて、國松弁護士は、「事実婚を選ぶ分かりやすい理由の一つは、夫婦別姓を望む場合ですね。現行法は、夫婦は同じ姓にしないといけないというルールがあるので、別姓がいいと望む方々は事実婚を選ぶしかない」と、事実婚が選ばれる背景に言及する。
「法律婚になると、扶養などいくつかの法的義務が発生する。そうした制約や義務に縛られたり、自分の生活スタイルを崩したくなかったりする人たちもいる。お金に執着せず、相続にも興味がないなど、法律婚による効果にあまりメリットを感じない人が事実婚を選ぶ場合もある」と、自由度の高さを魅力と捉える層についても指摘。公正証書に関しても、「最初からガチガチに決めておきたい、といった理由ではなく、結婚していることの証が欲しいという気持ちや、お互いの安心材料の一つとして、約束事を形にしておきたいという気持ちの表れもあると思います」と、その精神面での利点を挙げる。
公正証書を作成すれば、日常で具体的に役立つ例も想定できるという。分娩時の立ち会いや救急搬送時など、病院で配偶者であることを証明できないと立ち入れないケースも多くある中、「こうした場で事実婚を証明する上で、公正証書は役に立つと思います」と話す。
「2人ではなく3人、100人でも、当事者全員が納得していれば、事実婚は成立可能」と國松弁護士。「ただ、それはあくまで当事者間の気持ちや合意の中でのこと。契約で何とか法律婚と同じような状態を実現できたとしても、自分たち以外の社会が100人婚を受け入れるのか、これに合わせたルール作りを進めていくのかは、また別の問題」とも続け、本当の意味で法律婚と同じような扱いを受けるためには、「やはり社会がそれに追いついていくというプロセスが必要になってくる」と、受け皿になる社会の在り方についても触れた。