奥能登を襲った記録的豪雨から半年。
石川県輪島市町野町に唯一あるスーパーは、地震と豪雨で二重の大きな被害を受けながらも、住民の心の拠り所として奮闘を続けています。
輪島市町野町で約80年続く町で唯一の「もとやスーパー」。
しかし、半年前豪雨による川の氾濫で店は存続の危機に立たされました。

三代目社長の本谷一知さん。
もとやスーパー・本谷一知社長「(Q屋上に登ると当時を思い出す?)蘇りますよ。もう昨日の事の様に蘇りますね。水がすぐそこまで来てる感覚でね。ここが水没している感じやったんですよね。なすすべなくここから眺めている様な状態。あー全部流されていくーと思いながら見てましたね。何も無い状態にまたなったのでどう生きて行こうか率直に思いましたね」
今も続く河川の改修工事。
店の屋上からは変わりゆく街並みが一望できます。
もとやスーパー・本谷一知社長「街並みが変わって)忘れていくだろうなと思います。昔のイメージだけでしか残らないんじゃないかな。僕の小さい時は家がいっぱいあって路地裏で遊びますけど、どんどん家がなくなっていきますでしょ。前の風景とういのは忘れるだろうなと思います。寂しいというか育った所が無くなっていく。世界がかわっていく。僕はもちろんですけどここで育ってずっとおる人は特にそうなんじゃないかな?町野町は8割が公費解体の対象となってしまう。ほとんど更地の状態になってしまうんです。僕らが遊んだ見慣れた景色は変わりますけど、ここから、もし新しく町をつくるとなると建てるものが新しくなっていくじゃないですか。どうなっていくんだろうと。理想の方が先に立ってしまいますけどね。どんな街になっていくんだろうという楽しみもあります。寂しい反面楽しみもある複雑な思い。僕らやっていかなければならない。町を作っていかなければならないという立場で思ってますんで」
一度は店を諦めかけた本谷さんですが、町野町の復興を誓い2024年11月末には店の本格営業を再開。

支援に訪れるボランティアなどが利用できるフリースペースも開設、これまでに約500人の利用があったといいます。
もとやスーパー・本谷一知社長「(Q町のスーパーがなぜ?)町野町に育ててもらった。商売抜きで役割というか使命感というか、何ができるかと考えた時にこういうスペースが大事なんだろうなといち早く作りました」
本谷さんは他にもボランティアと住民が一緒に復興イベントなどに参加できるようにと、3月からシャトルバスの運行を開始。

フリースペースは今後、本格的な宿泊施設とし、店の周りを防災公園にする計画も描いています。

もとやスーパー・本谷一知社長「(イメージ図を見ながら)ここがスーパーマーケット、隣を交流スペースにするんですけど、こっちにレンタサイクル、その隣にコインロッカーなんかがあって、泊まれてこっちにイートイン。この駐車場を『町野の森』という風にしようと。水が店の右手の川から流れてきたので、防災をかねた公園を作ろうと」
そんな本谷さんに私生活を聞いてみると…
もとやスーパー・本谷一知社長「店の2階は元々、従業員さんの休憩場所で食堂だったんですけど、ぼく家が全壊したもんで、ここで僕は寝泊りしています。寒いですよ。男ひとりの生活ってこんなもんですよ」

妻の実家がある大阪へ娘と共に2人を避難させ、町野に残った本谷さん。

もとやスーパー・本谷一知社長「カップラーメンばかり食べてます(笑)だって男ひとりですもん。ボランティアが下で泊まる時は一緒に鍋したりしてますけど、ろくなもん食べてないです。食べ物大事ですよ。真似しないようにした方がよいですよ」
豪雨のあと、頼もしい助っ人がもとやスーパーに帰ってきました。

本谷さんの次男、悠樹さんです。
本谷悠樹さん「豪雨後に一回こっちの状況を見に来て泥が山積みだったので、これは帰って手伝おうと帰ってきました。この半年間、色んな人と出会って、色んな価値観にふれて人が来てくれる事のありがたみを改めて実感したなっていう半年でした」
本谷一知さん「19歳の子がこの町の中心にいるというのは町の人にとっても全然違いますよね。(Q継いでくれという思いは?)継いでくれとなるとがんじがらめになるので、可能性を潰す危険性もあるので色んな人と繋がって、自分の魂に正直に生きていって欲しいなと思いますね」
本谷親子の会話「肉食べたいよな?」「食べたい。」「肉とか寿司とか全然食べてないもんな。」(Q大阪にいるお母さんの手料理食べたいとかは?)「食べたいと言っておいた方が良いんじゃない?(笑)」「食べたいです」
店の再開や町の復興に奔走し続けたこの半年間。
生まれ育った地域への恩返しと、応援してくれる全国の人たちの思いを本谷さんは胸に刻みます。
もとやスーパー・本谷一知社長「この町の責任者というかね責任ある立場として僕が発信していかないと自分でそういう立場だと思ってフラッグを立て続けてやる事がこの町の為になるのかなと勝手に思ってやってますけどね。(Qこれからも走り続ける?)もちろん!もちろん!とにかくみんな来ていただいてこの町野町と交流して頂きたいなと思います。頑張りますよ」
地域住民をはじめ町野町の復興の為に奮闘する本谷さん。
旅行会社と提携して家族で訪れる事ができるボランティアツアーなどもやってみたいと話していて、もとやスーパーの挑戦は続きます。