アメリカのトランプ政権は、12日、予定通り、鉄鋼とアルミニウムに対する25%の追加関税を発動しました。例外、除外は一切認めず、重要産品の国内生産復活に向けた「本気度」を示しました。日本にとって最重要である、自動車への追加関税が避けられるか、暗雲が立ち込めてきています。

鉄鋼・アルミに25%追加関税

第2期トランプ政権が、品目別の追加関税に踏み切ったのは、今回が初めてで、トップバッターとして選ばれたのが、第1次政権でも追加関税の対象となった鉄鋼・アルミでした。日本は、第1次政権の際、「除外国」とはならなかったものの、一定量までは追加関税がかからない制度が認められていました。今回、発動直前に武藤経済産業大臣が訪米し、ラトニック商務長官らに、日本を除外するよう働きかけましたが、効き目はありませんでした。

これに対し、EU=ヨーロッパ連合は、4月から2段階で合計260億ユーロ(4兆円余)相当の報復関税を課すと、直ちに発表しました。この報復には、アメリカ産のウイスキーに50%関税を課すことも含まれ、トランプ大統領が「それなら欧州産のワインに200%課す」とさらに応酬するなど、事態はエスカレートしています。

また、カナダも13日から298億カナダドル(3兆円余)相当の報復関税に踏み切りました。すでにカナダは、メキシコと同様に例外品目はあるものの、国別の25%関税の対象になっており、まさに全面的な貿易戦争の様相を呈してきています。

トランプ政権は一時的な景気減速を容認?

アメリカの経済界も金融市場も、関税戦争による経済への影響に懸念を強めています。トランプとリセッション(景気後退)を掛け合わせた「トランプセッション」という造語や、それにインフレも加わった「トランプ・スタグフレーション」という言葉が冗談交じりに交わされています。

しかし、当のトランプ氏は9日のFOXニュースのインタビューで「年内の景気後退を予測するか?」との質問に対し、「我々は大きなことをやろうとしており、移行期間が必要だ」と答えました。米国強化と言う政策目標実現のためには、短期的な景気減速もやむを得ないとの考えを示したとも受け取れる発言で、この日、ニューヨーク株式市場は急落しました。「トランプは株価が下がるようなことはしない」との市場の期待に反し、「トランプは関税戦争に本気かもしれない」と失望感が広がったのです。

次のヤマ場はは4月の「相互関税」

トランプ関税戦争の次の最大の焦点は、4月2日に打ち出すとされる「相互関税」です。トランプ政権は国ごとに、相手国の関税や、規制や認証制度などの非関税障壁、さらには為替操作や付加価値税まで調査して、アメリカの関税と「相互的」になるように、追加関税措置を発表する方針です。

これまでトランプ大統領は、国別では、すでにカナダ、メキシコ、中国に追加関税を発動した他、EUやインド、ブラジル、ベトナム、韓国などに言及していますし、品目別には、今回の鉄鋼・アルミニウムはじめ、自動車、半導体、医薬品、木材などを挙げており、これらを整理した形で、包括的に国別の追加関税を示すと見られています。