鹿児島が全国1位の生産量を誇る黒豚。エサ代高騰などで生産農家は今、苦境に立たされています。そこには黒豚特有の事情もあるようです。

鹿児島市のスーパーです。牛肉や豚肉、鶏肉が並ぶ精肉売り場。黒豚はロースやとんこつなど20種類をそろえています。店の商品は去年の同じ時期と比べると、ほとんどが値上げ。黒豚も1割ほど上がりました。

(買い物客)「親戚が集まったり都会から来ると、みんな黒豚(食べたい)という。いろんなもの(の価格)がすごく上がっている。お肉はそれほどでもない」

(買い物客)「安いに越したことはないけど、我慢しないといけないと思っている」

鹿児島市の観光農業公園「グリーンファーム」で黒豚を育てる野上直樹さんです。南九州市頴娃町の農家と連携して、毎月黒豚をおよそ70匹、白豚を30匹出荷しています。

エサ代は、円安やロシアによるウクライナ侵攻の影響で、15年前に比べ2倍に値上がりました。

(ノガミ産業 野上直樹社長)「麦や大豆など輸入穀物に頼っている畜産の現状があるので、高騰するとそのまま原価に反映する。生産性に非常に厳しい状況を迎えている原因の一つ」

野上さんが頭を悩ませているのは、黒豚特有の事情もあります。

白豚は1回の出産で15匹ほど生まれますが、黒豚はおよそ10匹。また、白豚は生後半年ほどで出荷できるのに対し、黒豚は長ければ9か月かかる場合もあり、エサ代も余計にかかります。

出荷までにかかる費用は2倍近くに上がっていますが、販売価格が上がったのは1.2倍ほど。経営が厳しくなった生産農家の中には、廃業したり、白豚に切りかえる人も出てきているといいます。

県内の黒豚の飼育農家は2001年には532戸でしたが、去年は156戸と3分の1以下に減りました。

豚肉や牛肉の小売店などが加盟する県食肉事業協同組合連合会は、おととし、経営の苦しい生産者への支援を求める要望書を塩田知事に出しました。

(鹿児島県食肉事業協同組合連合会 肥後辰彦会長)「(黒豚を)絶やしてしまえばおしまい。県も鹿児島の黒豚を守るための援助をしてもらいたい」

県は、かごしま黒豚応援事業として飼料にかかる経費の一部を支援するなど、新年度予算案で6800万円を計上しました。

(ノガミ産業 野上直樹社長)「高く売ってもらいたいけど、そこは適正価格があると思うので、そこの差分に対しての鹿児島県の補填なり、もっとやる気が出せるような環境ができてくると、まだまだ鹿児島の畜産、鹿児島の黒豚は盛り上がる要素は持っていると思う」

日本一のかごしま黒豚をどう守っていくか、生産者は厳しい現実と向き合っています。