“DX革命”で激安価格を実現 「トライアル」取締役・永田洋幸氏が語る秘密と戦略とは

こうしたIT技術によるDX(デジタル・トランスフォーメーション)化の最高責任者が、トライアルホールディングスの永田洋幸(ながた・ひろゆき)取締役。代表取締役会長の長男にあたる。

――トライアルの象徴がタブレット付きのレジカート。どれくらいの人が利用しているのか。

トライアルホールディングス 永田洋幸取締役:
平均25%の来店客がタブレット付き「スキップカート」を利用している。

――実際にレジカートを使って、レジなしでキャッシュアウトできるとなると、どんな効果が出てくるのか。

トライアルホールディングス 永田洋幸取締役:
私たちにとっていいことは「想像以上のデータ」が取れるようになった。お客様の「個人データ」、それに「購買データ」をどんどん紐づけることで「可視化できるスマートな店」ができることを目指している。

セルフレジ付きカートの利用者から得られるのは、誰がどのようなものを買ったかという、「個人に紐づいた購買データ」。トライアルでは現在、このデータを活用して、レジカートで「個人に合わせたクーポンの提供」を試験的に行っている。

トライアルホールディングス 永田洋幸取締役:
(必要のない人に必要のない商品の情報が届くという)「使わないものの促し」は、余計なお世話でしかない。

――そういうやり方よりも、実際に店舗にいるときに、情報が届く方が効果はあるのか?

トライアルホールディングス 永田洋幸取締役:
私たちはそのように考えている。これを「非計画購買」と言っている。衝動買いに近い形で買う。これが「非計画購買」。大体2割が「計画購買」と言われている。8割は「非計画購買」。スーパーなどでふっと見た時に買い物する、消費に使っていることがほとんど。

トライアルの店内のあちこちに取り付けられたデジタルサイネージにもこうした「非計画購買」を伸ばす仕掛けがある。通常は、それぞれのコーナーに合わせた広告などが流れている。ところが…。

スーパーセンタートライアル長沼店 ストアマネージャー 庄内優斗さん:
今、ちょうど「唐揚げの出来立て」をお伝えするようになっている。

突然、流れ始めたのは、唐揚げのでき立てを知らせる動画。トライアルでは、店内すべてのデジタルサイネージが連動して、惣菜などの「出来立て情報」が一斉に流れるようになっている。

トライアルホールディングス 永田洋幸取締役:
「揚げたて」と伝えることで、惣菜の売り上げは上がる。視覚と聴覚を使ってお客様に提案することも進めている。

――サイネージを広告媒体として、メーカーや卸売業者からお金を取って広告を流すこともするのか?

トライアルホールディングス 永田洋幸取締役:
それも進めさせてもらっている。

――カートも、店の中の画面も、実店舗そのものがメディアになるということか。

トライアルホールディングス 永田洋幸取締役:
いい言葉をありがとうございます。その通り。(テレビの強敵で)大変申し訳ございません。

トライアルは、郊外の大型店とは対照的に、都心部では小型店「トライアルGO」の出店を増やしている。品揃えは総菜などの食料品が中心。ここで「セルフレジ機能」付きカートの代わりに、試験導入が進められている「DX技術」がある。

トライアルGO福岡別府3丁目店 南田圭祐店長:
顔認証を登録してもらい、そのままお支払いすることも可能。

セルフレジに付けられた「顔認証機能」。NECと共同開発したもので、顔とクレジットカード情報などを事前に登録しておけば、財布やスマホ要らずで、買い物をすることができる。

――「トライアルGO」。コンビニとの差別化は、どう意識しているのか。

トライアルホールディングス 永田洋幸取締役:
基本レジが“無人”な分、価格帯が安い。

――圧倒的な価格の優位性で、都心部でも競争していきたい?

トライアルホールディングス 永田洋幸取締役:
メルカリや、公共料金の対応をしなければいけないとか、あとは専門のコピー機も置かなければならないとか、コンビニはやることが多い。「食を支える」ことにフォーカスすれば、トライアルGOのニーズはある。

トライアルがディスカウントストア事業を手掛けたのは1992年。それ以前は、福岡県で家電量販店を展開しており、パソコン機器やソフトの開発を行っていた。そうした背景から、現在トライアルの店内で使われているデジタル機器の多くは自社で開発されたもの。今、最も力を入れているのが、多い店舗では500台以上設置しているという「AIカメラ」だ。