10日から始まったロシアによるウクライナ全土へのミサイル攻撃。これまでに首都キーウなど16都市に84発のミサイルが撃ち込まれ、120人を超える市民らが死傷しています。
プーチン大統領はクリミア橋で起きた爆発を「ウクライナ側のテロ行為だ」と主張し、ミサイル攻撃が“報復”だったことを明らかにしています。プーチン大統領の狙いはどこにあるのでしょうか。東大先端研 専任講師の小泉悠さんに聞きます。
■プーチ ン氏の狙いは“政治的報復”か
東大先端研 小泉悠 専任講師:
報復であることは間違いないと思うんですけれども、軍事的な報復というより政治的な報復であったという印象が強いですね。クリミア大橋というのが実際にクリミアを領域支配する上でのインフラであったというだけではなくて、クリミアをロシアが手に入れたという政治的な象徴でもあったと思うんですね。ですからそれに対する報復も政治的なものにならざるを得ないということで、久しぶりに首都、つまりウクライナの国家主権の象徴に対して空襲を行う。それから今回16の都市に対して同時に攻撃を行っていますけど、これまでほとんど攻撃されたことがないような地方の都市も相当攻撃受けているんですよね。ですから、ウクライナ全土に対してまんべんなく報復を行った、そんなふうに見えますね。
■今後、キーウなど大都市への攻撃は?
小川彩佳キャスター:
政治的な報復ということですけれども、キーウなど大都市への攻撃というのは今後も続いていくのでしょうか。
小泉悠さん:
もう既に2日行われていますから、例えば明日も行われる可能性はあると思いますし、ウクライナもこれでクリミア、クリミア大橋、その他ロシアの重要目標に対する攻撃を手控えないと思うんですよね。
これによって抑止されたという話にできないわけですから、ウクライナも攻撃を続けるとすると、おそらくロシアの報復も続くんじゃないかと。ミサイルの数も限りがありますけれども、何らかの形で、例えばウクライナの原発の副所長が拉致された話がありましたよね、所長がやっと解放されたと思ったら今度は副所長という形で、軍事的なものもその他のものも含めて恐怖を与えるような報復は続くんじゃないでしょうか。
■クリミア大橋の“爆発” どちらが関与?

小川キャスター:
そうすると双方エスカレートしていく可能性があるという中で、今回のクリミア大橋の爆発についてロシア側は「ウクライナ側の攻撃であった」としていますけれども、ウクライナ側は直接的な関与を言及していません。これについて小泉さんはどのように見ていますか。
小泉悠さん:
今回、おそらくロシアが自作自演でやったという見方もあるんですけども、あまりにもデメリットが大きいんですよね。ロシア軍が兵站線そのものを自分で切ることはなかなかしないと思いますから、多分ウクライナがミサイルでやったのか破壊工作員がやったのかわかりませんけど、ウクライナの攻撃なんじゃないかとは思います。
ただ、結構民間の車両も巻き込まれていて、あんまり自分たちでやったぞと誇らしく言える作戦でもないので言わないのかなというのが一つと、実はクリミアでも、ウクライナとロシアの国境でも、いろんな爆発って起こっているんですね。どれもウクライナはほのめかすことしかしていなくてはっきり言ってきてないんですよ。ロシア側も「それはウクライナの攻撃だ」って言っちゃうと苛烈なエスカレーションになってしまうので、これまでは言っていなかった。ロシアは今回認めましたけれども、ウクライナはこれまで通りなんだとすれば、おそらく曖昧な立場を維持し続けるんじゃないかという気がします。