“レーザービーム”誕生の裏に隠された驚くべき事実
イチローの代名詞である“レーザービーム”。この言葉はデビュー直後のメジャー初補殺を記録したプレー(2001年4月11日のアスレチックス戦)で誕生。
イチローの強肩はメジャーの野球ファンを驚愕させた。8回1死一塁、ライト前への打球に向かい、捕球後すぐさま三塁へ矢のような送球をみせ、三塁手へノーバウンドで返球。二塁を回っていたテレンス・ロングを見事に刺した。
マリナーズ一筋、現在もチームの実況を務めるリック・リズ氏は当時の衝撃を鮮明に覚えていると語った。

リック・リズさん:
あれは見たことのない送球でした。彼が捕球してから、弧を描くことなく一直線に飛んでいく。私にはレーザー光線のように見えました。レーザー光線が壁に当たっているのを見たような感じです。それほど真っ直ぐで素早く正確でした。だから“レーザービーム”と表現したのです。見ていて楽しかったです。
だが、このビッグプレーが生まれた裏には、驚くべき事実が隠されていた。このときイチローは“身の危険”を感じていたという。

イチロー:
あのときはライトのオークランドファンからコインを僕に向けて、もうバンバンを投げつけてくるんですよ。その一つが僕の頭に当たっていて、これはシャレにならない。危ないよ、目に当たったらシャレになんないから、これは上を見ちゃ駄目だと。帽子のツバを下げて、当たってもここまで。目には絶対当たらないようにしたんですよ。
記者:それはなぜそうされているって理解したんですか?
イチロー:
だからもう「お前何者なんだ」っていう冷やかしですよ。
リック・リズさん:
ただ知らなかったのです。ファンも私たちもイチローのことをよく知らなかった。オリックスで数年間活躍し、首位打者を何度も獲得した彼がメジャーリーグで通用するのか。しかしシーズン8試合目でアスレチックスのテレンス・ロングをアウトにした時、彼は野球界で最も偉大な選手の一人であることを世界に示しました。そして、全世界が日本から来た素晴らしい野球選手を知った瞬間だったのです。
イチロー:
これ(レーザービーム)を早い段階で見せられたのは良かったけど、この後、誰も走ってくれなくなっちゃったんだよね。
弓子さん:その後(コイン投げられるの)なくなったよね。
イチロー:そうね。これですごく変わった。“怒りのスロー”だった。
(第4回へ続く)