満票ならずも「1票足りないのは一番良かった」
アメリカの野球殿堂入りは、全米野球記者協会に在籍する記者の投票で決まる。イチローには史上2人目、野手では史上初となる満票の期待が寄せられていたが、わずかに1票足りなかった。

イチロー:おもしろいなと思ったのは、みんな満票の方が良かったと思ってる。じゃあ、どっちが僕にとってこれからの将来に、どちらが考えさせられる数字だったのかと思うと、断然1票足りない方がいいわけですよ。もし満票だったら「いやぁすごいね、やったぁ、気持ちいい、以上」だと思うんです。1票足りなかったっていうのは、不完全であるから進める、頑張れる、まあそういうニュアンスですけど。ストーリーができるのはすごくいいと思うし、満票ではそれはできないわけですよ。(満票だったら)「これまでやってきたことがアメリカでも認められて、本当に良かった、以上」なんですよね。だからそういうストーリーがあるのは僕は好きなので、メッセージ性ということを考えても、2票だと悔しい、2票3票だと悔しい、それなら満票の方が良かった。でも1票足りないのは一番良かったと思いますね。
これまでの高得票率は、ヤンキースで歴代最多の通算652セーブをあげた守護神・M.リベラが100%で1位。2位はヤンキースで主将を務め、通算3465安打をマークしたD.ジーターで99.748%。イチローは歴代3位となる99.746%、4位には通算630本塁打を記録し、マリナーズでともに戦ったこともあるケン・グリフィーJr.の99.32%だった。
記者:昔も今も、憧れ続けられる2人に挟まれてる気持ちってどうですか?
イチロー:(ケン・グリフィー)ジュニアは、18歳の時に存在を知って、そんな選手とチームメートに2009年になれたことだけでも夢が叶った一瞬だったし、まさか殿堂入りしてこうやってジュニアと並べるなんて望外の喜びです。
記者:ジーターの存在は?
イチロー:(マリナーズ時代は)同じディビジョン(地区)にいなかったので、数は少なかったですけど、敵としては一番嫌な相手でした。(ヤンキースで)チームメートになったとき、一番心強い選手でした。外から見ていた以上の存在だった。何よりジーターを中心にいろんなものが組み立てられている。そんな選手いないですよ。キャプテンと言われる選手はいますけど、あれ以上はいないと思いますよ。僕がプレーした時代にはいませんでした。
妻・弓子さんからのプレゼント
イチローはこの日、自身の背番号「51」をモチーフにしたネックレスを首からかけていた。

イチロー:(ネックレスを触って)これは今回のために、弓子がプレゼントしてくれたんですよ。
記者:いつもらったの?
イチロー:直前ですね、はい。だからこれも、昨日電話来なかったらつけられない(笑)。電話が来て良かったなと思った一つです。まぁやっぱり、人の気持ちはうれしいよね。
(第2回へ続く)