日本人初となる米野球殿堂入りを果たしたイチロー(51、マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)。殿堂入り発表前日から発表当日の様子、ニューヨーク(クーパーズタウン)の野球殿堂博物館までの道中など、6日間に密着。野球人生の節目を迎えたレジェンドに、独占インタビューなどを通じて、これまで語ることのなかった真実に迫った。(第1回/全4回)

メジャー生活19年で、10年連続200安打、シーズン最多安打(262本)、メジャー通算3089安打と、数々の金字塔を打ち立ててきたイチロー。史上2人目となる満票での殿堂入りが期待されたが、わずか1票足りず得票率99.746%での選出となった。

現地1月21日(日本時間1月22日)、殿堂入り発表の当日、自宅で妻・弓子さんとともに連絡を待つイチローを密着取材。夫婦でともに戦ってきたという2人の秘話に迫った。

弓子さん:選ばれた人だけに(電話が)かかってくるの?

通訳:はい。

弓子さん:選ばれなかったら、じゃあ・・・。

通訳:電話がないんです。

弓子さん:すごいドキドキしてきた。

イチロー:(連絡が)こなかったら、僕はドラフトで指名されなかった、そういう状態だよね。メディアの人を入れてドラフトかかると思ったら、かからず家に帰った人はいっぱいいるもんね。

その時、スマートフォンに着信が・・・。

イチロー:もしもし。

電話主:スズキ イチローと話したいのですが。

イチロー:はい、イチローです。

電話主:私は全米野球記者協会のジャック・オコンネルです。2001年、あなたが新人王を獲得した時も電話しました。今回あなたを日本人として初めて殿堂入りのメンバーに選びました。おめでとうございます。

イチロー:ありがとうございます。あー、良かったね。ありがとう!

(弓子さんら拍手)

イチローの背番号「51」が永久欠番に

さらに、マリナーズのオーナーからも祝福の電話が。イチローの背番号「51」を永久欠番にするとサプライズで伝えられた。日本人選手の背番号がメジャーで永久欠番になるのは、史上初めての快挙だ。

マリナースのオーナーと話すイチロー

オーナー:イチ?

イチロー:イエス!

オーナー:元気ですか?

イチロー:セニョール、元気ですか?(笑)

オーナー:今年の夏、君の背番号「51」を永久欠番にするつもりだ。そして外野のフェンスにグリフィー、エドガー、ジャッキー・ロビンソンと並べて飾るよ。

イチロー:いや、もうこれは言葉がないくらいうれしい。これは驚きましたね。永久欠番かぁ・・・。こっちの方が想定してないから、これはサプライズでうれしいね。

想定外の出来事にイチローも込み上げてくるものがあったようだ。

イチロー:最後にこれ以上ない、第三者からの評価。今まで野球を始めて終わって引退して、最後にこれが来るんだっていうのが、なんか僕らしくて良かったです。そこはすごくうれしい。僕はずっと誰よりもヒットを打ちたかった。誰よりも守備が上手くなりたかった。走塁も上手くなりたかった。それを地道に重ねてきた結果が今日だということなので。今日の、この日以上のものはない、プロ野球選手にとってはね。しかも最後サプライズで、マリナーズの永久欠番の連絡がオーナーから来て、最後こんなとこに来られるんだなって。

イチローは、自ら歩んできた道のりを改めて振り返った。

イチロー:2001年は、野手として初めて日本人の選手として挑戦したわけですけど、そもそもアメリカで通用するのか、通用するのかってどういうことだよって。僕からしたら本当に失礼な評価から始まって。それが1年目終わってみたら116勝して、そうすると、人の評価っていうのはガラッと変わって。いや、こんな手のひら返すのかって人ってね。そこを見たときに、第三者の評価、人からの評価というのは本当にあてにならないもので。人が評価するから、人がすごいと思うことっていうのは、僕はあんまり信じてないんですよ。でも、重ねてきた時間を振り返ると、感慨深いものがあると、そういう気持ちですよね。ホッとしている。