ウクライナをめぐりトランプ大統領がロシアに接近する動きを見せるなど、世界情勢は目まぐるしく変わっています。今回は国家安全保障担当の内閣総理補佐官を務める自民党・長島昭久衆院議員をお迎えし、自身が“調整役”となった日米首脳会談の「成功のカギ」や、今後の日本の外交における立ち位置などについて伺いました。(聞き手:川戸恵子 収録:2月25日)

トランプ氏発言に翻弄される国際社会 ウクライナ侵攻の“教訓”は「侵略されてはいけない」こと

ーー本当は日米首脳会談の話でお呼びしたんですけど…その前にウクライナの停戦をめぐる情勢。トランプ氏の発言であれよあれよという間に動きました。

長島昭久 総理補佐官:
本当に目まぐるしいばかりなんですけども。ただトランプ大統領が就任したらこういうふうになるというのはかなり前からわかっていた。キース・ケロッグさんっていう特使がいますよね。彼が以前、論文で停戦案を提示してました。で、今その通りになってます。つまり今の現状は停戦ラインだと。そしてウクライナをNATOにはすぐ加盟させない、それにプラスしてレアアースを一つの取引材料にすると。これぐらいのことは多分ヨーロッパもかなり覚悟していたところがあって。停戦後のウクライナの安全保障はヨーロッパが責任を持つという形でかなり画を描いてきていますので。本当にあまりにもスピードが早いのでみんなびっくりはしてますけれども、しかし定められた方向性に向かってみんなで協力していこうと。

ただ本当に一番かわいそうというか、道義的に本当に私も胸が詰まるのはウクライナ。もうこれだけ3年間頑張って、侵略に耐え忍んできて多くの犠牲が出て、手かせ足かせでなかなか思うような反撃もできずにね。今まで支援の仕方が少し中途半端だった。もちろん後知恵ですけども。それがこれだけ戦争を長引かせてしまったことにも繋がってますが…しかし第3次世界大戦にはならずに局地で抑えて。

まあロシアペースで進んでるところは、私達にとっても今日のウクライナは明日のアジアだと言ってきてますから、やっぱり終わらせ方は慎重にしてほしいと思いますけど。ただやっぱり私は本当に、今回の教訓は「侵略されてはいけない」んだなと。戦争を起こしたら、なかなか自分の思うような終わらせ方はできないんですね。

我々だってヤルタ体制でポツダム宣言を飲まされて。だから当事国は本当に厳しい。だから抑止力が大事だということをもう一度、このウクライナを一つの教訓にしていかなきゃいけないし。日本は、だから見捨てるって話じゃなくて、復興支援をしっかりやってあげると。

ロシアに接近するアメリカの“危機感” 米vs中で「大国間のパワーゲーム」

ーーもう一つ、トランプ氏、アメリカとロシアの接近も懸念です。

長島昭久 総理補佐官:
これはですね、地政学的には今の局面というのはおそらくアメリカから見たら、中国とロシアがあまりにも接近していることについての危機感があるんだろうと思います。これを「逆キッシンジャー」って言ってるんですけど。今は中国が問題だから、ロシアを引き込んで資源を対中国の戦略的競争に集中させよう、そしてヨーロッパはヨーロッパに任せようという多分そういうシフトなんだろうと思います。
逆に中国は何を考えてるかというと、これで米欧関係が厳しくなれば、もう一度ヨーロッパに接近してこの間を裂くと。良いとか悪いとかは別にして、おそらくパワーゲーム、大国間のゲームというのはこういうものだろうと思います。
問題は日本の立ち位置で。G7の一員ですから、アメリカとヨーロッパに亀裂が入ることは日本にとっては望ましくない。ですからうまくやっていく方法を模索していかなければいけない。