去年7月投開票の東京都知事選挙をめぐり、公職選挙法違反の疑いが指摘されている石丸伸二氏。投票日2日前に行ったライブ配信について、当初、業者に「有償」で依頼していた石丸陣営ですが、公職選挙法では選挙運動に対する報酬の支払いを禁止しているためキャンセルしました。
しかしその後、この業者側が「ボランティア」として配信を実施。当初の見積額と同額の97万7350円が「キャンセル料」として業者側に支払われていたのです。市民団体は2月10日、キャンセル料のうち45万円余りの実態は人件費で公職選挙法違反の「買収」の疑いがあるとして、石丸氏を刑事告発しました。
今回の件について、法律の専門家はどう見るか。刑事弁護に詳しい川崎拓也弁護士に聞きました。
◎川崎拓也:弁護士 ダンス営業が風営法違反に問われた「クラブNOON」裁判など10件の事件で無罪判決 刑事事件のほか企業法務も手がける
「人件費・機材費」→「機材費」でも金額は同じ

今回、公職選挙法違反の疑惑が指摘されているのが、都知事選の投開票2日前(去年7月5日)に行われた決起集会のインターネット配信に関してです。その少し前(去年6月23日)、石丸陣営のスタッフはライブ配信担当業者に“有償”でのライブ配信を依頼していて、業者からは見積書が出されました。その内容は、「人件費」「機材費」で約98万円。これに対して石丸陣営スタッフは「法に触れるので人件費を外して」と依頼したということです。
業者からは改めて見積書が出され、「人件費」という項目が消えて「機材費」のみに。金額は変わらず約98万円。ただ、石丸陣営の幹部が「有償そのものが違反。捕まるからやめろ」と指摘があり、決起集会の前日にキャンセルされました。その後、見積額と同額のキャンセル料約98万円が支払われることに。
しかし、集会当日の去年7月5日、業者側が「ボランティア」でライブ配信を行いました。この行動について、「業務」にあたるのではないか、そして、キャンセル料はそれに対する「報酬」ではないかという疑惑が上がっているのです。
そもそも、選挙運動に対して「人件費」が支払われることは公職選挙法違反であると、川崎拓也弁護士は指摘。特定の候補者を当選させるための活動=選挙運動は「原則無償」で、車上アナウンス・手話通訳などへの支払い以外は認められていません。その上で、今回のケースについて「項目が機材費だけになって、そのぶん金額が減っているのならわかるが、額は同じ。そうなると、単に名目を変えただけで、実態は人件費ではないかと思うのは自然」と川崎弁護士は話します。














