米国発祥のラケットスポーツ「ピックルボール」が、日本でも徐々に人気が高まっているのをご存じだろうか。日経トレンディの2025年ヒット予測でも14位にランクインし生涯スポーツとして期待されるなか、テニス経験者らの競技転向も増え続けている。日本にこの競技を広めたのは長野県在住のアメリカ人“ダニエル・ムーア”、元全米チャンピオンだ。彼は、ようやく火がつき始めた“ピックルボール熱”をさらに昇華させようと「プロ選手」の育成に着手し始めた。そのプロジェクトをシリーズで追う。

賞金総額300万円の強化試合も

アメリカでは約900万人がプレーし、“億プレイヤー”も誕生する注目のスポーツ”ピックルボール”は、女子トッププロの17歳、アナ・リー・ウォーターズの2024年の年収が300万ドル(約3億円超)と言われている。まさに“アメリカンドリーム”な競技だ。そんなアメリカ発祥の黒船スポーツは、日本国内でもテレビやメディアでの話題となることが増え、競技の認知は右肩上がりで広がっている。しかし、国内での競技人口はまだ1万人にも満たないだろう。プレー環境もなかなか整わない日本では、競技力の向上にも時間がかかる。元ソフトテニス・プロの船水雄太選手(31)はアメリカを主戦場として競技に専念しているが、そのような挑戦を続けられる選手は一握りしかいない。

全米で幾度もチャンピオンの座についた“ダニエル・ムーア”(36)コーチは、そのような日本の現場を見て、新しいプロジェクトに挑む決心を固めた。「海外でピックルボールに挑戦しようとする日本人選手は出てきたけど、アメリカで優勝できるレベルには届いていない。将来、海外で活躍する選手が日本中から出てきたら、応援しやすくなるし、日本のレベルを上げるために、僕はコーチングして若い世代を育てていく」。そこで、誕生したのが今回のプロジェクトだ。ダニエルと、プロテニスプレーヤーで長く日本代表としても活躍した藤原里華(43)コーチも参加。半年間の専門的なトレーニングで集中強化を図り、海外でも戦えるプロ選手を育成すると言うものだ。賞金総額300万円の強化試合も設け、選手のモチベーションアップもかかさない。単なるアカデミーでは終わらせず、国内の大会では必ず優勝者を出すんだとスタッフ陣は意気込む。参加選手たちへ明確な目標も与えて、フィジカル、メンタル、テクニカル、あらゆる面において本気の強化に取り組むのだ。