専門家「コメ自体が不足している」 背景には、事実上続く減反政策か?

良原安美キャスター:
減反政策の背景には、コメの需要減少が関係していると思いますが、実際、需要は減っているのでしょうか?

東京大学大学院 特任教授 鈴木宣弘さん:
日本人1人あたりが食べるコメの量は減っていて、年間約10万トンずつ需要が減っているといわれています。それに合わせて生産量もギリギリまで減らそうと、調整しようとしてきました。

▼転作して他の作物を作ったら補助金を出すなど、実質、減反政策や、▼政府が「適正生産量」を発表して、生産を誘導するということも続いていました。

結局、ギリギリで調整してコメ生産がどんどん減ってきていたところに、インバウンドでコメ需要が増えたり、猛暑で生産が減ったりすることをきっかけに、極端なコメ不足状態を生み出しました。

なので、コメは足りているわけではなく、コメ自体が不足していますから、それに対してビジネスチャンスを求めて流通業界が今回動いたということです。

井上貴博キャスター:
減反政策は、コメのあまり過ぎが問題となったことから、生産量を調整して農家を守るという背景があったと思います。

今、インバウンドで需要が増えていることを踏まえると、もっと生産量を増やして、あまった海外に輸出するという考え方の方が健全だと思います。どうしてそういう方向にならないのでしょうか。

東京大学大学院 特任教授 鈴木宣弘さん:
生産調整を続けてきた背景に、以前はそういうこともあったかもしれません。

しかし、今は生産調整をしてもどんどんコメの値段が下がり、30年前の米価の半分以下になっています。効果がなくても需要減に合わせて生産を調整することで、バランスを取ろうという政策は続けざるを得ないということが背景にあったと思います。

増産に切り替えて需要を拡大していきたいが、そうするとさらにコメの値段が下がってしまいます。今でさえ農家の時給が10円ほどまで落ちて、「もうコメ作りをやめる」という人が続出しています。そういう状況の中でさらに値段が下がったら、コメ農家の減少も加速してしまうでしょう。

コメ農家が継続できるように、増産して農家が赤字になった場合に支える仕組みを構築してうまく回っていけば、消費者も値上がりで困らず、農家も継続できて、さまざまな需要を拡大できるようになると思います。

この部分を政策転換で進めていく必要がありますが、財政負担が増えるのではないかといった問題があり、緊縮財政のもとで政策転換にも歯止めがかかってしまっているというジレンマがあるのかと思います。

井上貴博キャスター:
コメを作れば作るほど農家が赤字になってしまうということですね。需要と供給のバランスが悪くなって、毎年のようにコメ不足・コメ高騰といった状況になっても困りますね。

元競泳日本代表 松田丈志さん:
日本人の主食であるコメをもっと日本で作って農家さんも儲かる、海外にも日本の売り物として出していけるような仕組み・ビジネスモデルを作れないのでしょうか。

東京大学大学院 特任教授 鈴木宣弘さん:
やっと30年前の米価に戻って、農家は一息ついているだけです。
このままではコメ農家がいなくなり、またコメ不足が生じて大騒ぎになるということを繰り返してしまいます。これを止めるために、何とか増産できるような解決策が必要になります。

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<プロフィール>
鈴木宣弘さん
東京大学大学院 農学生命科学研究科特任教授
元農水省官僚 専門は農業経済学

松田丈志さん
元競泳日本代表 五輪4大会出場 4個のメダル獲得
JOC理事 宮崎県出身 3児の父