北陸を代表する冬の味覚、カニの解禁まであと1か月。去年の初競りで1匹500万円の最高値をつけた石川県産ズワイガニ=加能ガニの最高級ブランド「輝」に続けと、今年からメスの香箱ガニと、能登の寒ブリにも最高級ブランドがお目見えします。

去年、過去最高の1匹500万円で競り落とされた加能ガニの最高級ブランド「輝」の第1号。シーズンを通して獲れたのはわずか9匹という厳格な基準で選ばれた逸品は、全国的にも話題となりました。

1匹500万円の最高値で競り落としたのは金沢市と能登町で旅館を運営する「百楽荘」=2021年11月

「輝」の成功に続けとばかりに、石川県漁業協同組合は新たな一手を打ち出します。この冬からメスの香箱ガニに「輝姫(かがやきひめ)」、そして能登の寒ブリに「煌(きらめき)」という新たな最高級ブランドを創設。国内でも最も厳しい基準をあえて設け、専用のタグや札を付けて売り出すことを決めました。

最高峰にだけ付けられる特別なタグ 左はオスの「輝」 右は今季から新設される「輝姫」

石川県漁業協同組合で、魚介類のPRを担当する橋本勝寿理事は「正直言ってズワイガニは『越前ガニ』『松葉ガニ』が圧倒的に知名度が高かった。去年『輝』を設定して、全国的に発信して、ある程度加能ガニの名前も覚えてもらえた。そこで終わってはいけないので、今年は香箱ガニとブリで、石川県にはもっともっとおいしいものがありますよと発信したい」と意気込みます。

寒ブリの「煌」は1匹当たりの重さが14キロ以上と、釣り上げるには日本一ともいわれる最難関。「輝姫」も全ての脚がそろい、甲羅の幅は9.5センチ以上と、厳しい基準を設けました。

橋本理事も「正直言ってなかなかレアで、オスの加能ガニも9センチ以上は獲っていいことになっている。オスよりもまだ大きい、非常に数は限られる」と厳格な基準をアピール。

能登の寒ブリは全国的に知られる富山県の「ひみ寒ブリ」と比べ知名度が課題

「現場の漁師も「輝とるぞ」「輝姫とるぞ」「煌とるぞ」と盛り上がっている。もっともっと盛り上げて、情報発信して、ぜひ初日から上がることを期待している」と話します。

続々と誕生する新ブランドに期待を込める漁業関係者ですが、観光客にブランドは浸透しているのでしょうか。

金沢市の近江町市場を訪れた観光客に「かがやき」について尋ねてみると「聞いたことがない」といった反応。別の男性も「越前ガニはこの辺?石川県のカニってあんまり聞かない」と、ブランドネームの浸透はいまひとつのようです。

「松葉ガニ」や「越前ガニ」に比べブランドネームが浸透していない石川県の「加能ガニ」

石川県民からも、高級路線が続くカニに冷ややかな視線が。買い物をしていた女性は「手が届かない。もう少し手の届く範囲内のほうがいい」や「高値は私たちは縁がない。興味ない」と一蹴します。

県民の声を裏付けるようにカニの価格高騰は止まりません。オスは去年、「輝」の効果もあって1キロ当たり8653円で、記録が残る2000年以降で過去最高に。メスの香箱ガニもこの20年余りで2倍以上に高騰しています。

価格高騰が止まらないズワイガニ 買い求めやすいとされるメスの香箱ガニも20年余りで2倍以上に

市場関係者の思いも複雑です。大口水産の荒木優専務は「香箱ガニは地元の人に向けたカニだと思っていた。どんどん高くなっていくというのはちょっと残念かなという違和感もある。でもそれもクローズアップされるのは漁師にとっていいこと」と話します。

石川県漁業協同組合も、まずは全国的な知名度を上げ、求めやすい価格帯にも効果を波及させたいとしています。

まずは知名度アップを狙う石川県漁協の橋本理事

石川県漁業協同組合 橋本理事
「広告塔として、トップブランドとして、全国に情報を発信したい。(水揚げされる)数も少ないが、認知度が上がれば食べやすい規格のカニ・ブリも食べてもらえる機会が増える。石川県に来て、おいしい物を食べてもらいたい。石川県全体の観光面のプラスになることを期待している」