福島県内で長く愛されている老舗にスポットを当てる「老舗物語」。
今回は100年以上続く須賀川市の染工房です。

江戸時代から伝わる「型染め」による染めもの“江戸小紋”。

遠目だと一見無地にも見えるくらい、ごく小さな柄を一色のみで染め上げているのが特徴で、柄が細かいほど職人の高度な技術が必要といわれています。

そんな繊細な技術などを100年以上受け継いでいるのが、須賀川市にある形幸です。

渡辺幸典さん
「呉服屋さんなどから注文を受けて染める、江戸小紋や絹紅梅をメインに染めています。形幸になって3代目になります(息子さんが4代目)。」

こちらの形幸は捺染(なっせん)と言われる、染料を含んだ糊を直接生地に擦り付けて染める技法をメインに行っています。

さらに形幸では須賀川市では唯一、「型付け」「染め」~「干し」までを一貫して行っているんです。

そんな珍しい一貫作業を行っている形幸の工房はとても趣があります。

こちらで行われているのは主に型付け作業。
現在は4代目の泰幸(やすゆき)さんが中心となり作業を進めています。
泰幸さんの真剣な表情から、緊張感が伝わってきます。

今では染物店も機械化が進んでいますが、こちらでは機械は使わないんでしょうか?

渡辺幸典さん
「機械ではなくてあくまで昔の技法を手作業でやっています。手作業だからこそ自分で自由に思いついたものが作れる。」

手作業にこだわる形幸だからこそ生み出された江戸小紋がこちら。
一見大きなダリアの花柄に見えますが、よく見ると細かい水玉模様になっています。

渡辺幸典さん
「天目染をメインに何十年も前からやっていて、最近5色くらいを重ねてやっとお客さんの目に留まるようになってきた。」

天目染(てんもくぞめ)とは色を重ねて染めるという染色技法。
糊の乾き具合や天候、職人の感覚次第で色の出方も変わってくるんです。

色を重ねていくには経験と技術が必要で、3色重ねでも難しいと言われています。

未来を切り開いていく4代目の泰幸さんですが、実は家業を継ぐ前はまったく別な世界を歩んでいました。

渡辺泰幸さん
「もともと東京でバンドを目指してやっていたけどうまくいかず、両親の体調も崩してしまってタイミングが合って、手伝いからスタートした。」

もともとは音楽の道を歩んでいた泰幸さん。
まったく違うジャンルに進むことに、不安はなかったのでしょうか?

渡辺泰幸さん
「不安はあったけど、もともと一人で作業するほうがあっているかなと。

そんな4代目のことを、3代目で父親でもある幸典さんはどう思っているのでしょう?

渡辺幸典さん
「なにか新しいことにを考えないと生き残るのが大変な時代に来ている。一生勉強かなと思っています。」

一生勉強。
これからも伝統を守っていくためには技法を学ぶだけではなく、自らの新しいアイデアも織りなしていくことが大事なんですね。

形幸の江戸小紋は、およそ80年前から東京の「竺仙(ちくせん)」という呉服屋さんのみで販売しているんです。

形幸の技の巧みさが長く信頼されている証なんですね。

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『ステップ』
福島県内にて月~金曜日 夕方6時15分~放送中
(2025年2月13日放送回より)