商品開発の姿勢と、現場のニーズ
ピジョンタヒラ株式会社は1971年にタヒラ商会として大人向けおむつ、おむつカバーなど介護用品の製造販売で創業し、2004年にベビー用品のピジョン株式会社のグループ会社になって現在に至ります。
座面が平らになる車椅子「フルリクライニングキャリー」や利用者の座位姿勢を正しく保持する高機能の車椅子を「プロフィットケア」のブランドで販売しているほか、食事用エプロン、おしりふき、からだふき、口腔ケア用品などの高齢者・障害者の清潔介護に関連する商品を「ハビナース」ブランドで、ドラッグストア、通販サイトなどで発売しています。
中谷さんに会社がどういった姿勢で商品開発しているか聞きました
ピジョンタヒラ株式会社 マーケティング部マネージャー 中谷拓真さん
「現場でのお悩みをヒアリング、調査するところを商品開発を始める上で一番大事にしています。実際に在宅で介護されているご家族のお家にご訪問させていただいて1日の介護を観察させていただいたり、こういうことに困っているというお声を聞きながら、それを解決できる商品の商品化につなげていくのが基本的な流れです。車椅子でも、施設訪問で職員の方から『車椅子で座位姿勢の保持が難しい』というニーズを聞いて、『ラクリオ』『ラクレスト』などの車椅子の開発につながりました。現場からのニーズを長年、直接ヒアリングできていることは、お客様の本当のお悩みを商品開発に繋げる当社ならではの組織体制だと考えています」
こうした課題に取り組む背景には在宅で介護をする人たちのニーズがあります。
現在、要介護者のうち、在宅で介護される人の数が圧倒的に多く、2023年の厚生労働省発表では施設利用者97万に対して、在宅介護は425万人、約7割が在宅介護です。特別養護老人ホームに入れる条件が要介護度3以上で、要介護度1や2の人の数が圧倒的に多いのも理由のひとつです。
ただ、親は自宅で介護したいという思いを持った人も多いことや、突然病気になって数日入院し、退院したあとに在宅で介護せざるをえないケースもあって、そうした緊急的な状況で在宅で介護をしている場合、医師や介護士の指導などがないと情報が届かない面もあり、便利な商品があることを発見できないことも多いそうです。
そんななか、ピジョンタヒラでは介護の現場で様々に役に立つ商品を発売しています。
たとえば「簡単ポケット こぼさない食事エプロン」は食べ物をこぼしても床に落ちて汚さないよう受ける口の開いたの大きなポケットがついています。簡単に一枚に広げられ、食べこぼしの掃除が簡単です。
「やわらかい介助スプーン」は介助して、食べさせるためのスプーンで、口に当たっても痛くないシリコン製、食べる人の視力が弱っていても識別しやすい赤い色で作られています。

ほかにも、耳の遠い高齢者に、ホースを介して言葉を届けるような伸縮する、「もしもしフォン」というシンプルな聴覚補助商品もあります。
補聴器などを使わずに、当事者とコミュニケーションしながら言葉が伝えられ、小さな子供がおじいちゃん、おばあちゃんに語りかけるのに面白がって使ったり、1984年の発売以来、ロングセラーを続けている商品だそうです。
