「アベノミクス」への決別も
さらに言えば、「デフレ脱却」が達成されたのであれば、いわゆる「アベノミクス」に完全に別れを告げることが可能になります。
政治資金問題で解散に追い込まれたとはいえ、自民党の最大勢力であった旧安倍派には、いわゆるリフレ派議員も多く、岸田政権も、石破政権も、少なくとも「安倍レガシー」を傷つけるようなリスクは犯していません。
それを解禁することにつながる「デフレ脱却宣言」は、自民党内の力学に変化をもたらしかねません。そうしたリスクには慎重に対処するのが、政治家の知恵なのかもしれません。
正しい認識なしに正しい政策なし
このように色々、事情はあるにせよ、それでも、今の状態をインフレと認めないのは、無理があります。
現在の経済運営上の最大の課題は、インフレ率が高過ぎることです。24年通年の実質賃金は、マイナス幅こそ小さくなったものの、前年比0.2%の減少でした。これで実質賃金は3年連続のマイナスです。賃金が物価に追いつかない状態が3年も続いて、「好循環」を信じろと言われても無理な話です。
連合の芳野会長は、先日のインタビューの際、「去年5.1%もの大幅賃上げを実現したのに、実質賃金がプラスに転じなかったのは、本当に驚きだった」と語っていました。
「胸突き八丁」の、この時期に、ガソリンや電気への補助金縮小・打ち切りやコメ暴騰を放置してきた政策は、愚の骨頂です。政治の最大の仕事は、政策の優先順位をつけることです。それは。正しい現状認識がなしには、まずできません。
播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)