こちら平川市碇ヶ関にある「古遠部温泉」です。豊富な湯量のため入浴客が浴場の床に寝そべって湯を浴びる姿が多く見られ、動物になぞらえられ「トド寝」と呼ばれて人気を集めています。一方で施設がつくられてから40年を超え老朽化が進む、2023年に事業を継承した親子が個性的な返礼品を用意したクラウドファンディングを始めました。須崎蓮記者の報告です。
山奥の秘湯
東北自動車道碇ヶ関ICを出て車で15分ほど山間を走ると林道の終着地点に見えてくるのが「療養の宿 古遠部温泉」です。


携帯電話の電波が届かない山奥に位置しながら、利用客は多い日で100人に上ります。
※須崎蓮記者
「古遠部温泉の醍醐味は『トド寝』です。湯船からあがって、トドのように床に寝そべります」。

「トド寝」の発祥
毎分500リットル湧き出るかけ流しの湯を寝そべりながら楽しむ姿から動物になぞらえて「トド寝」と呼ばれ、古遠部温泉が発祥とされています。
※須崎蓮記者
「熱めの温泉が床にも流れているので、じんわり背中から温かくなってとても気持ちいいです」
さまざまな楽しみ方
「トド寝」の楽しみ方は人それぞれ。
たとえばうつ伏せ……
湯船から温泉を胸にかける……
桶を被って枕代わりにする……
様々なスタイルで楽しめます。

この日は親子で「トド寝」を楽しむ姿もありました。
※トド寝に初挑戦した高校生
「床のお湯が体全体を温めてくれる」
Qトドになれましたか?
「8割くらいなれてるんじゃないですかね」
1986年に開業
温泉宿として1986年に開業した古遠部温泉は後継者がないことから2023年には廃業が検討されていました。そこで立ち上がったのが現在の社長・後藤正男さんと息子の裕次郎さんです。
2人は湧き出たままの湯の泉質と「トド寝」に魅了され、宮城県から月に1回通うほどのファンで廃業を知ると仕事を辞めて、移住しました。

※古遠部温泉湯守 後藤裕次郎さん(39)
「ここの温泉がなくなることになっていたので、この温泉をなくしたらいけないと思って手をあげた」
※古遠部温泉 後藤正男社長(70)
「はじめは裕次郎の方に相談があった。私が息子から『一緒にやらないか』と言われた。即『いいよ』と返した」
悩みの種は建物の老朽化
事業継承から1年半、悩みの種は建物の老朽化です。施設の床の一部が傾いているほか、湧き出る湯を排水する設備が十分に整っておらず、湿気で床や天井の傷んでいます。

※古遠部温泉湯守 後藤裕次郎さん(39)
「(継承時から)だいぶ建物にがたがきていて、毎月直すところばかりで、私たちもがんばってきたんですけど、(全て直す場合)業者に話したら軽く1億円と言われたので、1億円はとても私たちでは難しい」
クラウドファンディングに挑戦 返礼品は「廃業まで使える入浴パス」
そこで挑戦したのがクラウドファンディングです。

目標金額の5000万円を達成するため返礼品も工夫を凝らしました。その1つが「廃業まで使える入浴パス」です。この先も温泉を長く続けていく覚悟のこもったリターンです。このほかオリジナルグッズや入浴回数券などを用意しています。
期間は3月31日までですが、開始から3日ですでに100万円を超える支援が集まっています。
100年200年でも残していきたい
※古遠部温泉湯守 後藤裕次郎さん(39)
「私自身もここのファンなので100年200年でも残していきたい。ずっと残していきたい温泉なのでみなさんにぜひ来ていただきたい」

青森の山奥で第二の人生を歩み始めた2人は秘湯を愛するファンとしても「温泉」と「トド寝」の文化を守るために挑戦を続けます。