国論を二分した安倍元総理の「国葬」や「政治家と旧統一教会」そして「物価高」といったホットな時事問題について橋下徹氏がスタジオで大放談。「国葬」について、菅前総理の「同じ空気を吸いたかった」というおくる言葉を聞いて号泣したと感想。「安倍元総理の功績は称賛する派だし、国をあげて感謝する」とする一方で「国家を上げて特定の人物を悼み、祀るという国家の背骨の議論が不足していた」と持論を展開しました。「旧統一教会」問題については「トラブル団体を抱えている宗教団体とはかかわるべきではない」と提言しています。(2022年9月30日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

『国家として特定の人物の死を悼み祀るということの議論がなかったから今回は反対』

 ―――安倍晋三元総理の国葬については、菅義偉前総理のスピーチに注目が集まりました。橋下さんは、安倍氏と菅氏が一緒にいるところに同席されたことが何度もあるということですが、菅氏の言葉を聞いてどう思いましたか?

 (橋下徹さん)
 「『同じ空気を共にしたい。同じ空気を吸いたかった』というのを他局の生放送の番組で聞いて号泣しちゃったね。司会者も含めて番組が次に進まなかったもん。言えます?奥さんとかに対して。僕は妻と同じ空気を吸いたいですよ?だけど、多くの人がそうしたことを言うかなと。同じ空気を吸いたかったって思ったんでしょうね、最後の息を引き取るかもわからないってその状況の時にね。僕は本当に菅さんの心のこもった挨拶だと思うんですが、ただ、国葬でこのスピーチをやるかどうか、そういうことの議論はあったんですかね、この我が日本国は。僕は安倍さんの功績は賞賛する派だし、それからやっぱり国を挙げて感謝をして。それは賛否両論あるんですよ、政治家ですから、やっていることに関してはね。でも、7年8か月、第1次政権を含めれば8年8か月、本当に総理の仕事というのは命を狙われながら本当にしんどいから。それをよくぞここまでっていうところで僕は感謝の念をというふうに、これは僕の持論ですけども、その話と国葬って別だと思うんだよね」

 ―――MBSの三澤肇解説委員も菅氏の周辺を取材されてましたが、いかがですか?

 (MBS 三澤肇解説委員)
 「(スピーチで)『総理、あなたはいつも笑顔でした』という部分がありましたよね。関係者によると、やっぱり“総理の安倍さん”と一緒にいる“菅官房長官”はその時も笑顔だったと。総理と一緒にいるときのあの菅さんの笑顔は本当に良かったし、安倍さんが亡くなってからその笑顔が失われてしまったと。そういう背景があるから、追悼の辞を聞いたとき、もう涙が止まらんかったと、そういうふうに言っていましたから。やっぱり永遠の総理だったんですよ、菅さんの中で安倍さんは」
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 (橋下徹氏)
 「(菅氏は)『趣味は安倍晋三』って言っていたんですよ。それ友人関係とかでありますかね?だけど僕、今回の国葬の議論というのは、『国会の議決をとらなかった』とか、『税金を使ってどうだ』という議論はあるけど、その議論よりももっと奥深い、本当は国家の背骨の議論になると思うんですよ。国葬についてはね。これは国家が特定の人物を祀るというのは民主国家ではだめだと、嫌だという意見もあります。それは国葬反対派で、僕はそれいいんですよ。だから、税金使っちゃいけないとかそういう細かな話じゃなくて、国家が特定の人物の死を悼み祀るというのはだめだと、民主主義の国ではだめだという考え方もあれば、もう1つは、国に貢献した人の死を国を挙げて悼む、それから国の責任で命を奪ってしまった人、これは戦没者ですよ、そういう人たちに対して国を挙げて死を悼む。僕はこれはね、国家の背骨として必要だと思う。これはアメリカでもどこの先進諸国、ヨーロッパでもみんなそれをやっているわけなんです。しかし、日本は第二次世界大戦を経て、もう軍国主義への復活ってものを阻止しようということで、国家を挙げて特定人物を祀るってことは全部禁止になった。77年間それをやってこなかった中で、靖国神社問題というのも一宗教団体に全部丸投げしてしまった。特定の人物を国を挙げて悼むということをやらなかった中で、一気に雰囲気で『国葬だ』ってやってしまったもんだから、今回。象徴天皇制の国でね、国葬ってどういうものなんだと。奇しくもエリザベス女王の国葬と比較になってしまったけど、僕はあれはイギリス国家の国葬だと思いますよ。戦没者追悼式のときには陛下のお言葉が出るんですよ。僕はやっぱりそれがね、国の儀式としての国葬じゃないかと。他の葬儀でお言葉を述べるということは慣例上ないのかもわからないけれども、国家の象徴天皇制の日本の国での国葬ということでは、僕はやっぱり陛下のお言葉は必要だと思っています。こういう、国葬賛成・反対も細かな手続き論じゃなくて、国家として特定の人物の死を悼み祀るということはどうすんのっていう議論がなかったから、僕は今回は国葬は反対」

 (三澤肇解説委員)
 「おそらく手続き論は、国会を通すとか三権の長に言うとか、ある程度簡単にできると思うんですけど、問題はその特定の人を誰にするのかっていう基準作りですよね。総理をやった人は全員なのか、5年以上だったらいいのか。そんな年限で区切れるものじゃないから、そこの基準作りは相当立法化するにも難しいなと」

 ―――今後の国葬を考えたときに、法的根拠・基準・プロセスをどう踏んでいくのか、ここはどうあるべきだと考えていますか?

 (橋下徹さん)
 「政治家を評価する、政治家の評価を伴うような場合には業績は無理です。アメリカの大統領は全員です。遺族が拒否しない限りは全員。僕はこれはあるべき姿だと思う。アメリカの場合には民主党と共和党って完全に支持者が半分半分に割れるけれども、民主党の大統領であろうが共和党の大統領であろうが、大統領になった以上はみんな死を悼みましょうと。僕はそれはあるべき姿だと。ただ、日本の場合は議院内閣制だから、任期が半年の場合もあるし1年の場合もある。でも、国葬といって政治家をある意味こう死を悼むということになるのであれば、僕はこれ全員やるしかないと思うけどね。業績判断は絶対もうできないと思う。もう1つ、やっぱり象徴天皇制の国なんだから、内閣、これね、みんな野党の方は『国会の議決が必要だ』『国会をないがしろにしている』って言うんだけれども、そうじゃなくて、一番重要なのは象徴天皇制の国で陛下の関与をどうするかっていうところを考えなきゃいけない。日本も国葬というのは、天皇陛下・上皇陛下の崩御の際には大喪の礼で国葬をやっている。ここをラインとして考えれば、どういう人物にするのかと。これはね、大層な業績じゃないとだめじゃないかってなるけど、それはもう無理だから、やっぱり地位でやるしかないと思いますけどね」