ヒトメタニューモ感染症とは 春節前に…中国で感染拡大

小林由未子キャスター:
中国で感染が広がっているヒトメタニューモウイルス感染症についてお伝えします。

ヒトメタニューモウイルス感染症は、2001年にオランダで発見されたウイルスで、“いわゆる風邪”の一つとされています。

感染経路は、感染者の咳やくしゃみといった飛沫感染や接触感染です。特徴は、感染の多くが5歳以下の子どもで、季節性のものではなく、1年を通して感染が確認されているウイルスということです。

主な症状としては、発熱、咳、鼻水といった季節性インフルエンザに似た症状が現れます。また高齢者などは悪化すると肺炎の恐れもあるということです。

ただ、風邪ウイルスの一つと言いますが、インフルエンザや新型コロナウイルスと違いはあるのでしょうか。

【潜伏期間】
・ヒトメタニューモ 2~5日
・インフルエンザ 1~5日
・新型コロナ 1~5日

【治療薬】
・ヒトメタニューモ なし
・インフルエンザ あり(タミフルなど)
・新型コロナ あり(パキロビッドなど)

【ワクチン】
・ヒトメタニューモ なし
・インフルエンザ あり
・新型コロナ あり

長崎大学・大学院の森内浩幸教授によると「ヒトメタニューモウイルス感染症は特効薬がないので、『解熱剤』や『咳止め』などの処方薬での対処療法しかない」ということです。

ホラン千秋キャスター:
中国で感染が拡大しているということですが、私たちはどのように捉えておけば良いのでしょうか。

長崎大学大学院 教授 森内浩幸さん:
ヒトメタニューモウイルス自体が見つかったのは2001年ですが、それよりもずっと前から日本を含む世界中にいる風邪のウイルスです。中国で今、増えていると言っても、日本に元々いるウイルスのため、すごく心配する必要はないと思います。

ホランキャスター:
強めの風邪といった認識で良いですか。

森内浩幸さん:
風邪のウイルスがいっぱいある中で、どちらかというとより重症化しやすいタイプではあると思います。ただインフルエンザやコロナほどのものではないと思って良いでしょう。

井上貴博キャスター:
特に子どもや年配の方にはリスクがあるという話を聞きますが、このウイルスはどのように変異していくのでしょうか。新型コロナウイルスは中国政府がうまくグリップできずに気づいたときには既に広がっていました。変異をしっかりと監視できるかどうかのリスクについてどのように捉えていますか。

森内浩幸さん:
風邪の流行があったときに変異を事細かに調べることは通常はしていません。ただ、大きな変異が起こり免疫が効かなくなっている様子であれば、大人もどんどんかかっていくだろうと思います。それが新型コロナや、2009年の新型インフルエンザのときに起こったわけです。

今回、子どもたちが中心で起こっている流行なので、大人は以前にかかった免疫で守られているということが想定されるため、大きな変異が起こっている可能性は非常に低いと思います。

ホランキャスター:
新しい名前が出てくると驚いてしまう方も多いと思いますが、今までもあったウイルスのため、私たちができる感染症の予防策を徹底することが大切ですね。

TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
ただ、のべ90億人とか、中国はボリュームが大きいです。ビザも緩和されてきているので、おそらく春節で日本にどっと人が入ってきます。それに対してブロックすることもできないので、うがいや手洗い、マスクなどで防衛するしかないですね。

小林キャスター:
過剰に心配する必要はありませんが、ある程度の予防は必要です。手洗いや室内の換気、アルコール消毒、人混みではマスクをすることを心がけてください。

井上キャスター:
どうしてもこのようなウイルスが流行すると、ある程度メディアで大きく報じられることになりますが、現場はどのような温度感なのでしょうか。これまでにもあったウイルスで、発見されて20年以上経っています。「そりゃそうだよな」というほどのものなのでしょうか。

森内浩幸さん:
2001年に見つかったウイルスなので、ある程度年配の医者は「なんだそれ、初めて聞いた」と驚かれたと思いますが、特に小児科医にとっては日常茶飯事で普通に見ているウイルスなので、そこまで驚くような話ではないと受け止めています。

井上キャスター:
特効薬などがまだ無いというのは、特に作る必要がないという判断なのか、20年ぐらいだとなかなか作れないということなのか、どのように受け止めるべきですか。

森内浩幸さん:
むしろ風邪のウイルスの中で特効薬があるのはインフルエンザとコロナの二つだけです。これは例外的であって、他の何百種類もあるウイルスに対しては何も特効薬はないわけです。逆に言うと、自然と治っていくわけなので、すごく大きな必要性はありません。

ただ、どんな風邪のウイルスでも、赤ちゃんやお年寄り、いろいろな持病を持っている人にとっては油断ができないので、やはりかからないようにする必要があります。かかったときには少しでも体を休めて体力を温存させて早く治るようにすることが大切です。

ホランキャスター:
感染症に関しては新型コロナウイルスを経て、各国何か特別な大きな変異があったときに、それを瞬時に即座に捉えられるようにっていう、システム作りみたいなものを進めているのでしょうか。

星浩さん:
データ管理を厳格に行うようにしているのですが、実際は中国やヨーロッパの方は、かなりデータが瞬時に集まるようになってきています。日本の場合は実はデジタル化の遅れもあって今ひとつ先進国の中では遅れています。この辺のデータ管理もきちんと行うようにするべきです。

実は開業医の中できちんと報告するのに時間がかかったりしているケースがまだまだ多いので、その辺の体制整備が必要だと思います。

井上キャスター:
森内教授もその点はずっと仰っています。日本はまだFAXで報告していると言われますからね。

森内浩幸さん:
残念ながら日本はかなりそれが遅れていると思います。ただ、今回のヒトメタニューモもそうですが、どのようなものが突然流行るかわからないため、今度から普通の風邪でも5類相当としてしっかり捉えていこうという動きが出ているということでもあると思います。

これもやり方を間違うと混乱を招いてしまいますが、何か新しいことが起こったときに確実に捉えることができるような体制、そしてそれを瞬時に私たちが解析できる体制が必要だと思います。

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<プロフィール>
森内浩幸さん
長崎大学大学院 教授
専門は小児科医
日本小児感染症学会理事長

星浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身
政治記者歴30年