次世代調査の行方は?

厚労省は2021年、被害者からの再三の訴えを受け認定患者の子どもと孫を対象にした「カネミ油症次世代調査」を開始した。調査を担うのは、事件発覚当時から油症の治療法の研究や患者の追跡調査などを行ってきた全国油症治療研究班だ。2024年4月から中原剛士・九州大大学院医学研究院教授が班長を務めている。

これまでの調査で、先天性の「口唇口蓋裂」の発生率が油症次世代に高い傾向にあることが報告された。しかし、次世代救済の道筋は示されていない。

全国油症治療研究班 中原剛士班長:
「これまでの調査で油症次世代に『口唇口蓋裂』が多いのではないかということが分かってきた。もう一つ、もしかしたら差があるかもしれないのが『先天的な歯の異常』。だが先天的に歯に異常があると回答した次世代のうち、実際に医師らが診察する『油症検診』にきた人が少なかったため、現時点での判断はできず、今後も継続して検診と共に解析を進める予定である」

Q、油症患者から生まれ、症状を訴えている人を認定する方向にはいかないのか?

全国油症治療研究班 中原剛士班長:
「患者認定の根拠を科学的に示していくのが研究班の役割。そこを超えることは我々がしたくてもできない」

「これまで油症研究班では、へその緒、胎児の便、胎児の油(胎脂)などに、親が摂取したダイオキシン類が含まれていることを明らかにしてきた。そこから言えることは、子どもに移行する可能性と、移行してもその後排出されている可能性だ。次世代調査は、子どもに移行する可能性がある前提で行っている」

「直接PCB・ダイオキシン類を摂取した人と次世代の患者認定が全く同じではいけないことは、もう我々は認識している。次のステップとして、どこの所見を重視して次世代の認定を考えるかを議論していく段階に入っていると思う」

「我々はあくまでデータや科学的なものを元に、見直しを行う議論をする。時間がないと言われるのも分かる。次世代も大きくなる。しかし地道な研究が、将来的に患者や次世代を救う可能性はある。同時に今示せるエビデンスで科学的根拠を持って適切な診定につなげることもやっていく。自分たちの立場でできることを精一杯やりながら、患者を少しでも救える方向に行けばと思っている」