“相思相愛”を引き裂く大統領 ナゼ?
小川彩佳キャスター:
日本製鉄会長の怒りを前面に出した会見がありましたが、なぜここまで怒っているのでしょうか。
23ジャーナリスト 片山薫 記者:
例えとして考えていただきたいのですが、日本を代表する製鉄メーカー(日本製鉄)とアメリカを代表する製鉄メーカー(USスチール)は、お互いに好きだから婚約に至りました。それも結構いいダイヤ(買収額)を提示し、お互い納得の上で結婚を決めました。

婚約が決まり、そろそろ結婚式という時に割って入ってきたのがバイデン大統領です。例えとしては、USスチールの“親戚のおじさん”ぐらいで、「うちのUSスチールと結婚するなんて許さん。国家安全保障上の脅威になるんだ」と言いました。
しかし、日本製鉄としては、2兆円のお金を用意して、「きちんと再生させます」と言っていたのに、なぜいきなりこんなことを言われるのか、国家安全保障上なんの脅威があるのかが納得いかないので、バイデン大統領を訴えたということです。
小説家 真山仁さん:
アメリカは世界で一番の資本主義国だと思ってると思います。それなのに、相思相愛であるにも関わらずなぜ政治が介入するのか。これは衰退の始まりではないのかと思うくらいとんでもないことだと思います。

23ジャーナリスト 片山 記者:
片山さんの例えで言うと、USスチール側の親戚のおじさん(バイデン大統領)と向き合うべきは、石破総理(日本製鉄側の親戚のおじさん)だと思います。
親戚のおじさんではありますが、明らかに失礼な対応や論理が通らないことにはきちんと交渉しなくてはいけません。しかし現状では、政府関係者は「行政としてやれることは限られている」と話しています。

これから考えるべきは、1月20日以降大統領となるトランプ氏とどう向き合うかです。おそらく、石破総理は就任後、早いうちにトランプ氏に会いに行くと思いますが、このときにどのような交渉ができるか、きちんとトランプ氏と交渉できるかがポイントだと思います。
真山仁さん:
「行政としてできることは限られている」と言っていますが、ホワイトハウスは行政ではないのでしょうか。アメリカ側は行政が出てきて、自国の一企業を守ろうとしています。USスチールと日本製鉄は相思相愛で、買収を実現できたら、もちろん日本製鉄にとっても重要ですが、USスチールにもプラスになります。
ここまで介入されたら、普通日本政府は怒らなくてはいけません。一企業がアメリカ大統領に訴えていることに対してこんなことを言ってたら、世界中の投資家が日本の一流企業をいくら買っても日本は絶対何も言わないだろうと思われてしまいます。
例えば、過去にトヨタがアメリカでトラブルに巻き込まれたり、日産にトラブルがあった時に、アメリカやフランスは国が出てきました。しかし、その時日本はいつも知らん顔していたんです。
ただ今回は両方が相思相愛なので、ここを放っておくと、日本の資本主義が危ぶまれるぐらい大変な事が起きます。もしかしたら、これを境に日本もアメリカも沈没していくかもしれないぐらいの重大事だと石破氏が分かっているかが心配です。
===============
〈プロフィール〉
片山薫 記者
23ジャーナリスト 経済部筆頭デスク
財務省や経産省・農水省などを担当
真山仁さん
小説家「ハゲタカ」「ロッキード」など
最新著書に「疑う力」