■正午すぎの「介入疑惑」
◆正午ごろ◆
日銀が大規模な金融緩和の維持を決定
→1ドル=145円台に突入
(その直後、為替がピクンと円高方向に動く)
「『介入か?』と話している人がいます」
トレーディングルームを取材中の後輩から「介入」を疑う声が聞こえたとメッセージが入ります…。
◆13:14◆
財務官が13時半から急遽取材に応じるとの連絡が入ります。
いよいよか?会社からカメラを呼ぶ時間もない…普段は別の省庁を担当する
後輩も応援に駆け付け「デジカメ」で速報対応することに。

■「スタンバイの状態と考えていい。いつでもやる用意がある」
◆13:30◆ 神田財務官
「日銀政策決定会合だけでなく、FOMCも挟んで、やはり相場が大きな乱高下をしております。以前から申し上げています通り、為替相場の過度の変動、無秩序な動きは家計であろうが企業であろうが非常に悪影響を及ぼすものであって容認できるものではありませんので、過度の変動の場合には、あらゆる手段を排除することなく適切な対応をとる用意はできていますし、そのように行動することを考えております」
ーーいま行動を検討されている?
「そういう、スタンバイの状態と考えてもらってよいと思います」
「正直申し上げて まだ(為替介入を)やっておりません。しかし、いつでもやる用意はございます」
いよいよ「口先介入」としては最大限の強さになった後、黒田総裁の会見が始まります。
■「当面、金利を引き上げることはない」
◆15:39◆ 黒田日銀総裁
「当面、金利を引き上げるというようなことはない、と言っていいと思う」
いまの金融緩和政策を維持し当面は金利を引き上げることも、金融政策の先行き指針(フォワードガイダンス)を変更する必要もないと強調した黒田総裁。
自らの総裁任期は来年の春までにも関わらず「指針の変更は2~3年はない」と踏み込んだ発言までしたのです。
その発言の後、再び円安が進行します。
1ドル=146円台に近づいたころ、再び神田財務官がぶら下がりに応じるとの連絡が。
◆17時過ぎ◆
映像素材をLIVE配信で本社に送ることができるカメラクルーが到着。24年ぶりの為替介入の速報を、TBSはどこよりも早く伝えることができました。
◆17:14◆ 神田財務官
「足元の為替市場では投機的な動きも背景に急速で一方的な動きがみられております。政府としてこうした過度の変動を憂慮しており、先ほど『断固たる措置』に踏み切ったところであります」
ーー断固たる措置とは為替介入か?
「そうです」
ニュースは ただ早ければ良い…というものではもちろんありません。とはいえ24年ぶりの「為替介入」は、速報にこだわりたかったのも事実です。
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その後、3連休中の、ある日のこと…
ーー知り合いの専門家は、今回の介入のタイミング、定石通りではあるがサプライズ感もあり良かったのではと評価していました。
政府関係者
それは、当局サイドとしてはありがたい言葉だね。まあ1週間くらいのスパンでみないと、効果の程は見えてこないけどね。
政府関係者と、そんな話をしたのもつかの間。
26日、日米の金利差が改めて市場に認識されたのか1ドル=144円台になり、ほぼ振り出しに戻る形になりました。
鈴木財務大臣は今回の為替介入について「一定の効果があった」と評価しています。
「何もしない」から、「何かするかもしれない」という心理が生まれることで円安への過度な変動を抑制する効果が期待されるからです。
為替介入の規模=金額は、市場関係者によると約3.6兆円と推計されています。
1日としては過去最大の規模で介入をしても、円安に進む市場の大きな流れは変えられないのです。
今後、日米の金利差が拡大する中で円安の急激な進行は止められるのか?
次の介入はさらに難易度が高いと言われていて、先の長い神経戦は、いまも続いています。
TBSテレビ報道局経済部 財務省担当 池田誠
