禁断の質問…なぜカラオケ映像は古く見えるのか
──偶然にしてはできすぎで怖いと思いきや、1曲1曲、細かく調整していたとは…。次が最後の質問で、少し言いにくいのですが、なぜカラオケの映像は微妙に古めかしいのでしょうか? たとえるなら“平成レトロ”とでも表現できそうな…。
「それは恐らく“既視感”が理由ではないかと…。
かつてJOYSOUNDは、機種が新しくなるたびに、映像データが入ったハードディスクごと入れ替わる仕組みでした。発売から年数が経過した機種が置かれたカラオケ店に行けば、発売当時に制作された映像が今でも流れますので、『見たことがある』という感覚は否めません。
現在の機種は、設置後も随時新しい映像を追加できるように進化していますが、次の機種が出るまで数年使われ続ける映像もあります。俳優さんの服装や髪型、メイクなどの変化で『これはあの頃だ』とわかってしまうのでしょう。
また、機材も年々アップデートしていますので、映像の陰影や奥行き、質感が撮影時期によって変わってきますね。そこで古さが出てしまうのだと、我々も最近になって気がつきました」
──なるほど、腑に落ちます。逆にいえば、カラオケの映像を、時代の象徴として味わうこともできそうですね。
「2015年発売の機種あたりからは、街にランドマーク的な建物ができれば、すぐに撮影して反映させています。そこは皆さんへの訴求力があるのではないでしょうか」

金子さんは「カラオケの音楽データはオリジナルの楽曲を参照して制作します。一方で映像は『こうあるべき』というものもなく、いまだに『正解』を定義することが難しい」とも語ったが、もはや映像もカラオケの名脇役と呼べるだろう。
もし大人数のカラオケで「みんな知らない曲ばかり歌うな…」と退屈になってしまったときなどは、いっそのこと画面に目を凝らしてみてはどうか。きっとそこには、“主張しすぎない美学”が色づいている。