中東のシリアでは半世紀に及んだ独裁政権が、今月一気に崩壊しました。その直後にJNNの取材班は現地入りし、アサド政権下で行われた残虐な市民弾圧の現場を取材しました。
“独裁”政権崩壊 シリアは今

増尾聡記者
「シリアの国旗が見えてきました。まだアサド前大統領の写真が載っています。少し破られています」
“独裁”と恐れられたアサド政権が崩壊して3日目の今月11日。JNNのクルーが、日本メディアとして初めてシリアに入った。
増尾記者
「政権側の軍用車両が道路上に数多く放置されたままになっています」

増尾記者
「シリアでこれまで使われていた国旗が捨てられており、踏みつけられた跡もあります。シリア軍の兵士は、身に着けていたものを脱いで、自分が兵士と特定され、復讐されないように、このあたり一帯に放置されているのがわかります」
反体制派勢力のメンバーに、政府軍との戦いを聞くと…

反対派勢力「シリア解放機構」メンバー
「逃げ出した人もいましたが、追いかけることはしませんでした。最高の気分です。国中が喜びに沸いています」
反体制派勢力が大規模な攻勢を開始したのは11月27日。

拠点のあった北西部のイドリブを出発し、3日後には、第二の都市アレッポを掌握。そして一気に首都ダマスカスまで陥落させた。半世紀続いた政権は、わずか12日で崩壊したのだ。

増尾記者
「市内ではアサド前大統領のポスターが剝がされたり、地面に貼られた前大統領の写真を皆さん踏みつけて通行するなど、前政権への憎悪をいたるところに感じます」
親子二代にわたって政権を握ってきたアサド大統領。反体制派のデモを武力で弾圧し、強権的な統治を行ってきた。2011年からの内戦では、ロシア軍の支援を受けて市街地を度々、空爆。30万人以上の民間人が犠牲になった。アサド大統領はロシアに亡命した。

増尾記者
「アサド政権崩壊後、初めての金曜日。イスラム教徒にとって大切な金曜礼拝を終えた後、市内中心部には大勢の人が集まり、もはやお祭りです」

市民
「生まれて初めて自分の言いたいことを言えて、気に入らないことも批判できる」
中東地域を研究する高橋氏は、政権崩壊に至った経緯をこう分析する。

放送大学 高橋和夫名誉教授
「おそらく反体制派側は締め切りを意識していたと思う。トランプ大統領がシリアに派遣しているアメリカ軍を撤退すると前から言っている。就任したら、場面がガラッと変わる。その前に陣取りをしておきたいとアレッポを押してみたら、がたがたとダマスカスまで陥落したというのが実情ではないか」