ロシアのプーチン政権は、ウクライナの反転攻勢を受け、30万人規模の予備役動員に踏み切りました。これに対してロシア各地でデモが起きています。こうした状況について、ロシア政治の専門家である筑波大学の中村逸郎名誉教授は「メディア統制が効力を失いつつある」と分析します。追い込まれるプーチン大統領ですが、そんな中で核攻撃の可能性については「戦術核より原子炉への攻撃」とし、それが行われた場合の被害の大きさについても詳しく解説します。

30万人規模のデモ…若者の不満が噴出 デモ参加者に「軍への召喚状」

ーーロシアで30万人規模の部分動員にデモが広がるというニュースが入ってきました。デモで拘束された人に警察署で軍の召喚状が手渡されるというケースが相次いでいるということです。軍の召喚状ということですから、戦地に行きなさい、『特別軍事作戦』に参加しなさいということですか?
「そうですね。警察署だけではなくて、私が読んだニュースによれば身柄を拘束された道で召喚状が渡されてしまうケースもあるということですね」

ーーこれに従わなかったらどうなるのでしょう?
「罪として刑務所に連れて行かれるということをみんな怖がっているわけなんですね」

ーーデモに参加している人は一般の人たちですか?
「今回非常に若い人が多いですね。元々は、今回の軍事侵攻があって、若い人たちが馴染んでいたスターバックスだとかマクドナルドがどんどん撤退していったというところで、そもそもこの侵攻に対する不満があったところで、こうした形で部分的ですけど動員令が出て、一気に噴出しているという状況なんですね」

ーー中村先生によりますと、メディア統制が効力を失いつつあるんじゃないかと?
「これまで5月、6月に私もロシア語でニュースがなかなか読めなかったんですが、特に独立系メディアで、今本当に自由にアクセスできて、読めると。しかも政府系と言われているメディアでもこういった事実を淡々と報道するようになってきているんですね」

国内で加速する“プーチン離れ”「故意に骨折」「犯罪犯し」徴兵逃れる人も

ーーロシア国内でプーチン離れが加速しているということです。徴兵を逃れようとする人が続出し、現在、外国へ逃げる人が増えているほか、故意に腕を骨折するという人や犯罪を犯す人が出てきていると。腕を骨折というのは、自らけがをして…ということですか?
「はい。そして入院して徴兵を逃れるということです。あと、国外にどんどん出ている人が今多いということで、ドバイへの航空券は日本円にすると120万円ですよ。10倍とか20倍近くも跳ね上がっている状況なんですね。しかもイスラエルの首相が、ロシア国内にいるユダヤ人に向けて、ロシアを脱出して自分たちの国に来なさいと声明を発表してるんですね。そのためにイスラエルからロシアに特別便を送るぞと。外国からもプーチン離れに対してサポートが入ってきている状況なんですね」

(MBS三澤肇解説委員)
「召喚状がどこに届くかということですが、モスクワ、サンクトペテルブルクなど、要は都市部でも召喚状が来ていると。これまでの戦死者リストについて、あるモスクワ支局経験者と話していたんですけど、戦死者リストを見るとやはり国境付近とかちょっと貧しい地域の人が多いが、今回の召喚状はそういう都市部にも届いてると。だからこういったデモも起こりやすいんじゃないかという背景があるというふうに言っていました」

ーーでは今、プーチン大統領がどういう状況にあるのかということですが、中村先生によりますと、『侵攻を終わらせたい』『兵力の維持がしんどい』『G20に参加したい』『そろそろ結果がほしい』こういったことを考えてるんじゃないかと?
「なぜかというと、欧米から経済制裁をいっぱい受けて、経済も大変なわけですね。そうした中でプーチン大統領にとって経済制裁の穴埋めとして、11月15・16日にインドネシアのバリ島で開催予定のG20です。プーチン大統領も参加すると言っているし、インドネシアの大統領もプーチン氏が出席すると言ってる状況なんですね」