■“つながらない”背景に「新幹線不要論」も根強い佐賀県の事情

背景には「新幹線不要論」も根強い佐賀県の事情があります。新鳥栖から武雄温泉まで新幹線をつなげた場合の建設費は、国交省の試算で6200億円、そのうち佐賀県の負担が660億円とされています。

すでに博多から佐賀まで在来線の特急で約40分で到着するので、新幹線による大きな時間短縮効果は期待できません。また、新幹線が開業すると、並行する在来線の本数が減少し、利便性が下がるとの懸念があります。「効果より負担のほうが大きい」というのが佐賀県の立場です。

そこで、新幹線の線路を新しく作らずに在来線の線路を生かすアイデアが出されました。

■課題解決に幻の車両?

それが「フリーゲージトレイン」の開発・導入計画です。「フリーゲージトレイン」とは、車輪の幅を変えられる車両のこと。これができると、線路の幅の広い新幹線から、幅の狭い在来線に変わっても走り続けることができ、再び新幹線の線路に戻ることもできます。


しかし、開発はうまくいかず、JR九州は2017年、「採算性が成り立たず、運営は困難」と車両の開発を断念。在来線の活用という前提が崩れてしまいました。国側は、西九州新幹線を新鳥栖まで延伸することを推進していますが、佐賀県はフリーゲージトレインの再検討などを求めていて、議論は平行線のままです。


■走り出しても…先行きは不透明

現在の新幹線の整備状況をみると、北海道新幹線と北陸新幹線の一部で建設工事が進んでいますが、どの路線も新幹線のネットワークにつながっています。その中で、西九州新幹線だけ、ネットワークから外れています。つながるメドも立たないまま開業となりました。今後どうなっていくのでしょうか。


(「サンデーモーニング」2022年9月25日放送より)