“京アニ事件”との意外な接点

2023年9月、歴史的事件の裁判が京都で始まった。社員36人が死亡、32人が重軽傷を負った京都アニメーション放火殺人事件。現場にガソリンをまいて火をつけた青葉真司被告(46)が法廷で語り始めていた。

事件から2年後に起きたのが、北新地ビル放火殺人事件。谷本容疑者は、この“京アニ事件”を犯行前に調べていて、参考にしたとされている。

多くの人が巻き込まれたその真相に迫ることで、これまで直視できていなかった遺族としての感情に向き合う必要があるという思いから、伸子さんは青葉被告の裁判の傍聴に訪れた。

青葉真司被告
「たくさんの人が亡くなるとは、おもっていなかった」

軽率な気持ちで犯行に及んだ青葉被告。この日の裁判では、初めて遺族が被告に質問を投げかけた。

自分の愛する家族がなぜ殺されなければならなかったのか。遺族らは、被告の言葉の中に答えを探した。傍聴を終えた伸子さんは…

伸子さん
「奥様を亡くされた方が質問されていましたが、最後の質問で、『火をつけるときに、その方に家族がいるとか、子供がいるとか考えなかったんですか?』と質問されていて、『考えていなかったです』と答えていました。その時に、北新地の事件で亡くなられた皆さんに家族がいて、その皆さんのつらさとかを一気に感じた気がして、聞いていてつらかったです」

裁判を通して、これまで蓋をしていた遺族としての自分の感情と向き合った。

谷本容疑者と青葉被告には、もう1つ共通する点があった。それは、別の事件で服役していた過去があったということ。

加害者にも寄り添い、手を差し伸べることが新たな犯罪を防ぐ近道かも知れない。伸子さんは1つの答えにたどり着いた。