容疑者は生活が困窮、社会から孤立を深め…

事件があったのは、金曜日の午前。北新地のクリニックには大勢の患者がいた。突然ガソリンがまかれ、火をつけられた。

事件を起こした谷本盛雄容疑者(当時61)はクリニックの元患者で、自らも一酸化炭素中毒で死亡した。

以前は、腕の良い板金工だったという谷本容疑者。スマートフォンには、交友関係を示す連絡先はなく、銀行口座の残高もほぼなかったという。生活が困窮し、社会から孤立を深める中、自暴自棄になり、他人を巻き沿いに拡大自殺を図ったとみられている。

伸子さん
「人間って、本当に人と関わっていかないといけないものだと思うんですよね。容疑者の人も、ほとんど学校の先生が覚えてらっしゃらないとか、もう存在がなかったとか、そういう人だったってお聞きして、すごく寂しい人生。誰にも『自分はこう思ってる』とすら言ってないような気がするんですよね。『それは間違ってるで』とか言う人がいてもおかしくないのに」

弘太郎さんの死後、元患者らは定期的に交流会を開くようになり、伸子さんも自然に参加するようになった。

行き場をなくした元患者らは、合う先生を探すのが難しいと口を揃えて言う。交流会のメンバーにとって、亡くなった弘太郎さんの妹・伸子さんは、特別な存在だ。

元患者・男性
「単純に、元気を伸子さんからもらえる。自分も前に進んでいこうとか、自分ももっと頑張ろうとか、というふうに思わせてくれる」

元患者・女性
「まだ私の中で西澤先生は今もきっと見ていると思うので、西梅田(北新地)の心のクリニックの診察券を毎日持っていて、お守りです」

このとき伸子さん自身が、遺族としての悲しみを直視できていないと話すこともあった。