60トンの希望

Factory建設本部 井手健一土木部長代理:
「ここは本土の方から見たらしけていないと思う時も、実際来たら結構なうねりがあることもある。上から見た感じでは『仮設材』として袋詰めの石などを海底に設置しているものが転がってしまっている」

「海中」かつ「波」の影響で、一筋縄ではいかない端島の護岸工事。そこで鍵となるのが「巨大な消波ブロック」です。

Factory建設本部 井手土木部長代理:
「今回工事する現場の海の中に置いて、波を消すのが目的のブロックなんです。だいたい高さは4.5m、重さは60トンぐらいです」

この消波ブロックを、工事箇所より手前に設置することで、波の影響を最小限におさえるのが狙いです。(イメージ図は「画像を見る」から確認できます)

Q全部でいくつ作るんですか?
Factory建設本部 井手土木部長代理:
「一応予定でいまのところ64個です。目的物を作るために波を消してくれる重要な役割のものだと思っています」

「消波ブロック」を1つ作るのにかかる日数はおよそ4日。護岸を守る工事だけでなく事前の準備から長い時間と労力を要します。

Factory 山本清和社長:
「結構難易度が高い工事です。なかなか稀に見る天候の地域なので、今まで培ってきた海洋土木技術を駆使して、なんとか端島の風景を残したい」

未来へつなぐ使命

上陸観光が賑わう一方、崩壊の危険と隣り合わせの状況が続く端島。風、波、時間の中で崩落していく人工島の姿を、日本の急速な近代化の歴史を伝え、学ぶための遺産として後世にも残すことができるのか。

長崎大学・出水工学博士:
「護岸がなくなってしまうと、島自体の存在がなくなってしまうんです。長崎県に与える観光へのダメージというのはかなり大きいのではないかなと思っています。軍艦島・端島は文化財としての価値もかなり大きいので、護岸を守ることは生きている我々が守る一つの使命だと思います」

Factory建設本部 井手土木部長代理:
「大変なところです、工地自体は。でもこの有名になった端島に自分も貢献したい。島を守りたい」

護岸の全周は1150メートル。今回の工事箇所は東西およそ20メートルの部分です。島の存在自体が危ぶまれる「待ったなし」の状態の中、工事は進められています。

繁栄の残り香といつ崩壊するとも知れない儚さが多くの人をひきつけている端島。これからの島の行く末は、島にかける人々の技術と思いに託されています。