2年連続で大不作となった有明海の海苔
11社の中には、地球温暖化の影響を深刻に感じている企業もある。佐賀市川副町に工場を構える三福海苔は、地元で養殖された質の高い海苔を使って、佐賀海苔の販売を行っている。


有明海は国内の海苔生産量の約6割を占める産地で、中でも筑後川が流れ込む川副町の広大な干潟では、2021年には全国の13%を超える生産量を誇っていた。最大で6メートルにもなる日本一の干満差によって十分な光合成ができることと、山からの養分を含んだ河川と海水が混ざり合うことで、高品質で旨みが強い海苔が取れている。

佐賀県自体も、2021年まで19年連続で海苔の生産量が日本一だった。ところが、約18億枚を誇っていた生産量は、2022年に9億枚に半減。翌2023年も同規模の生産量となり、2年連続の大不作となった。この2年間の生産量は兵庫県に抜かれている。
大不作の原因として考えられるのは、海水温の上昇と、海の栄養塩不足だった。三福海苔の川原崚専務は、海の変化を次のように説明する。
「海苔の養殖は、海水温が23度以下にならないと始めることができません。ここ数年は海水温が下がる時期が遅く、種付けの時期が遅くなりました。さらに今年は、海水温が思ったように下がらず、種付けがうまくいきませんでした」

海苔の養殖は、海苔の胞子がついた牡蠣の殻を袋に入れて、海に設置した網に吊るす方法で行われる。

海水温が23度以下になると、海苔の胞子が飛び立って網に付着していく。しかし、昨年までの2年間は、海水温の上昇や栄養塩不足により、過去になかったような大不作となった。三福海苔の後継者として、2年後に事業承継を予定している川原専務は、この大不作によって危機感を強く抱いた。
「私は今34歳なので、少なくともあと30年は海苔の業界にいると思います。でも、さらに海水温が上がるとすると、30年後を考えたらぞっとするんですよね。海苔の産地にいるからこそ、この業界が廃れていくのは見たくないですし、守っていく責任があります。海の環境を守るために自分たちの若い世代が何とかしなければいけないと思っています。“二酸化炭素ゼロ”に取り組むことによって、少しでも引っ張っていける存在になっていきたいですね」(川原専務)
三福海苔では業務の効率化、海苔を保管する大型冷凍庫の最新型への更新、店舗や工場内にある照明のLED化などによって、二酸化炭素の排出量を2021年度の88.13トンから、2023年度の78.64トンまで約10%削減した。


カーボンクレジットを購入して“二酸化炭素ゼロ”を実現しているものの、川原専務は「二酸化炭素の排出量そのものを減らしていきたい」として、現在は生産管理のデジタル化による業務の効率化を進め、今後は再生可能エネルギーの導入も検討している。
