「1.8トンが上下する」という装置

照明装置の重量は、約1.8トン。それが直径6mmのワイヤー8本で吊り下げられていました。ところが、そのワイヤーを巻き取るドラムとモーターを結ぶチェーンが断裂したのです。いちおう安全装置のストッパーが設置されていたものの、照明装置の落下速度が速すぎて機能しませんでした。

事故当時、店内には約200人の来場者がいたといいます。真下にいた17人が下敷きとなり、女性2人、男性1人が死亡しました。

わずか数十cmの差が生死を分けました。

落下した照明装置は、図にある通り楕円に近い形状をしており、中央部には何もない形状でした。このため、落下時に中央にいた客は軽傷ですんだといいます。

杜撰な設計と事故の影響

事故原因はなんだったのでしょう。当初は店員の操作ミスのように言われましたが、後になって、設計ミスが原因だと判明しました。吊り下げ装置が弱すぎたのです。

上下動の際に、装置には約3.2tの荷重がかかるところ、1t程度の荷重にしか耐えられない設計でした。

照明の吊り下げ装置は、事故後の実験で3分の1以下の強度しかないことが分かったのです。

この事故により「トゥーリア」は開店わずか8か月で閉店となり、社会は大きな衝撃を受けました。安全基準の見直しが進められた一方で、責任の所在を巡る議論も続きました。

施工会社の関係者には有罪判決。しかし店の運営者などには責任が問われなかったことで、批判の的となりました。

ディスコブームとバブルは続く…

この事故を受け新安全基準(懸垂物安全指針)が取りまとめられ、その一方、トゥーリアはひっそりと取り壊されました。

約40年前の事故、六本木の風景もずいぶん変わりました。

この跡地に設置されたのが、冒頭のお地蔵さまなのです。
しかし、この事故以後もバブルのディスコブームは止まらず、六本木を避けるように、ブームの中心地を「ウォーターフロント」に移し、芝浦GOLD、ジュリアナ東京などが全盛を極める時代がやってくるのです。