「同じ釜の飯を食う人間は放っておけない」更生支援を行う社長の思い
少年院を出た少年たちは、実際どのような道を歩んでいるのか。

兵庫県尼崎市でビルやマンションの清掃事業を行う松本商会。社員12人のうち、刑務所や少年院を出た若者が現在4人働いている。
男性(22)
「友達とバイクに乗っていて、無免許でひき逃げしてしまって。(社長に)恩返しじゃないですけど、期待以上の動きをしたいなって僕が思えた」

社長の松本和也さんは、4年前から罪を犯した人たちの更生支援を行うプロジェクトに参加し、協力雇用主として彼らを支えている。
松本和也 社長(38)
「自分も失敗してきたこともあったし、僕と同じ釜の飯を食う人間は僕はもうほっとけないんですよ」
入社して1年になる19歳の少年は、この日、新築アパートのハウスクリーニングを担当。今は現場を一人で任されることもあるという。

少年(19)
「僕、動くの好きなんで、じっとできないタイプなんで。気になりだしたら、気になってしまうんで」
窃盗や傷害など、中学生のころから非行に明け暮れていたという少年は、16歳の時、「ぐ犯(家でなどを繰り返し、罪を犯すおそれがある)」で少年院に。そこで松本さんの講話を聴いたことがきっかけで入社した。
少年(19)
「(出院まで)残り3か月で親に帰るのを拒否された。直感じゃないけど、ここ(松本商会に)行ってみたいなって思った」
小学生の頃、クラスメートに石を投げるなど、問題行動を繰り返していたという少年。医師からはADHD(注意欠陥・多動症)と診断されたこともあったというが…
ーー自覚はあった?
「ないです。周りの奴がおかしいと思ってたんで、僕。ひねくれてたんです、多分。僕がすべて正しい、周りが全部間違ってると思ってたんで」

少年院を出ても帰る場所がなかった少年を松本さんは家族ぐるみで支えている。
松本社長
「最近、よく家来るやん。嫌じゃない、別に?」
娘(12)
「うっとうしいときあるけど、話し相手としか思ってない」
その2週間後、少年が暮らす会社の寮を訪ねると…
松本社長
「昨日(仕事)来なくて、連絡つかなくて」

少年は前日から姿を消していた。部屋には脱ぎ散らかした服や、空のペットボトルが散乱していた。
松本社長
「初めてやったんか言うたら、もう数えきれんぐらい、やってて。友達と会ってワイワイしてて、『明日仕事ブチったろか』みたいな感覚やと思うんですよ」
度重なる無断欠勤に、一部の社員から「クビにした方がいい」という声も出始めている。それでも松本さんは、少年の更生支援を諦めきれない。
彼が少年院にいるとき、松本さんに送った手紙には…

少年が少年院在院中に送った手紙
「僕は社長にとても感謝してます。こんな僕を必要としてくれることにもすごく感謝してます。僕は不器用で迷惑かけてしまうことも、もしかしたらあるかもしれないですが一生懸命がんばっていきます」

松本社長
「これで僕が放っておいて、行くところなくなって半グレ戻って、お前これやれ、あれやれっていいように使われて、刑務所行ったって聞いたら僕多分泣きますよ。僕ものすごい責任感じるの分かってるんで、だから彼をほっとけないんですよ」
その日の夜遅く、少年が松本さんの家に現れた。

少年
「遊びに行く前はほんまに、仕事ブチるとかそんなこと考えてなかったし、何時に帰ろうかなぐらいの気持ちでおったんですけど」
松本社長
「お前のあかんところはな、別に遊びに行くなとか言わんけどな、お前コントロールできてないところと、お前一番あかんのが、謝罪できへんとこ、ちゃうか。お前はどうしたんや、おりたいんか?」
少年
「僕はおりたいから帰ってきたんですけど、ぶっちゃけ考えましたよ」
松本社長
「飛ぶか飛ばないか?」
少年
「絶対、帰っても怒られるし」
聞けばこの数日間、地元の仲間たちと過ごしていたという。

松本社長
「お前が悪いと思ってるなら、こう(謝罪)やったらいい、言っても仲間なんだから昨日今日の関係とは違う」
少年
「分からん、自分で自分のことが分からん、何が言いたいか分からん。自分のことが分からん」














