問われるWEリーグの姿勢とメディアの資質

女性のスポーツに関して、国連の経済社会理事会の諮問資格を持ち、主要なスポーツ団体に提言を行っている「ウィメン・スポーツ・インターナショナル(WSI)」が、なでしこの上位リーグであるWEリーグ(Women Empowerment League)に対して、2024年9月の役員改選は「マズいのではないか」というコメントを先日出しました。

どういうことかというと、WEリーグの第3代チェアマンに、現Jリーグチェアマンと兼任することになった野々村芳和さんが着任したんですが、その結果、理事9名のうち女性が3人となったのです。リーグ名称が示す「女性のエンパワーメント」という理念を後退させたと言わざるを得ないということです。

先ほども言いましたが、スポーツ庁はスポーツ団体に「女性役員割合を40%以上とする」というガバナンスコードを持っているんですけれども、これにも反しています。しかも、これに対してメディアからも鋭い指摘がないということも合わせて指摘されています。

海外でもハラスメントが問題となっている

海外でも例えばスペインのサッカー連盟の会長が、女子のワールドカップ優勝選手にキスをして謝罪をしたということが2023年にありました。この件は今、スペインでNetflixの番組になっていて、スペインサッカー界の腐敗問題と合わせて非常に話題になっています。

スペインや世界でもそういうことが問題になっているわけです。スポーツ界のハラスメントの問題、そこに女性であるという複合要因、交差性というんですが、交わるところでは差別がすごく起こりやすいということです。

私は今年3月「一般社団法人スポーツハラスメントZERO協会」というものを立ち上げました。11月末にはスポーツハラスメント検定というものを始めます。ハラスメントのことをちゃんと認識するために、私達は人権をベースにしたアプローチをしようと思っていて、個人というより組織やスポーツ界の構造の問題の方をちゃんと重視しようと考えています。

誰かを吊るし上げて懲戒処分をして終わり、ではなく、きちんとその構造を理解して無くしていこうという場を皆さんに提供したいと思っています。「スポーツハラスメントZERO協会」をインターネットで調べていただき、興味持っていただけたらなと思います。

次世代にこんな不名誉な話をずっと残したくはないはずなので、まずは今回のなでしこリーグの2人の選手にはきちんとした対応をしていただくということと、再発防止にちゃんと取り組むということがすごく重要です。社会の声は力になるので、ぜひとも注目していただきたいなと思います。

◎谷口真由美(たにぐち・まゆみ)

法学者。1975年、大阪市生まれ。2012年、政治談議を交わす井戸端会議を目的に「全日本おばちゃん党」を立ち上げる(現在は解散)。元日本ラグビーフットボール協会理事。専門は、人権、ハラスメント、男女共同参画、女性活躍、性教育、組織論、ジェンダー法、国際人権法、憲法。