2日目は「お好み焼き」からスタート

2日目。グラウンドにいた1年生の酒井唯仁選手に取材スタッフが声をかけた。「憧れてた人だったので、初めて会えたのがとてもうれしくて、あんまり寝つけなかったです」と、目を輝かせて答えてくれた。

酒井君は、大阪の強豪私立から声がかかっていたにも関わらず、あえて公立の大冠に進学したという。「公立校っていうハンデがある中で、『私学強豪から眼中にない』っていうのは分かっていましたが、それをひっくり返すのも高校野球の醍醐味で面白さでもあるので、ひっくり返せるように力をつけたい」と、その思いを明かし「イチローさんとは今日が最後なので、盗めるものは全部盗みたい」と、力強く語ってくれた。

お好み焼きを焼くイチローさん

学校内のテントに鉄板が用意され、イチローさんが姿を現した。ムードメーカーの山崎君が、あるお願いをした。

山崎:イチローさん、お好み焼きを1枚焼いてもらっていいですか?

イチロー:いや、だからそのために来たから。知ってるよ、もう(笑)

部員たち:(爆笑)

笑顔を見せお好み焼きを焼き始めるイチローさん。なかなかのレアショットに・・・

イチロー:こういうの、メディアの人って喜ぶよね。昔から好きだよね。ハハハハ・・・。

2枚のコテでお好み焼きをひっくり返そうとするイチローさんに合わせて、部員たちが「ウォー!」と掛け声。するとイチローさんはコテを交差させて「タイム!」

部員たち:(爆笑)

見事にひっくり返したイチローさんに大歓声が上がる。和やかな雰囲気の中、2日目の練習がスタートした。

イチロー:野球は、投げるのも打つのも、ガチガチに力入れて力強い動きというよりは、スムーズな動き、軽く見えるけど、力は実際に伝わっていて、いいボールがいくし、いい打球がいくし、という所を目指してほしい。走るのも一緒。軽く走ってるように見えて速いね、バタバタ回転速いのに進まないな、ではいい動きとは言えない。そういうイメージを持ってもらいたい。大事だけどすごく難しい。

レジェンドの金言で一気に場の雰囲気が引き締まる。走塁練習に始まり素振りにキャッチボール、距離を取ってのスローイング練習。イチローさんはまず自分がやってみせて、その後、選手たちに投げさせる。晴天に恵まれ、額に汗を浮かべたイチローさんの丁寧な指導が続く。