「中絶できず…苦しんだ」病院に脅迫も
大統領選の大きな争点の一つとなっている「人工妊娠中絶の問題」。激戦州の一つ、アリゾナ州に中絶をめぐる国の方針に弄された女性がいます。

クロエ・パートリッジさん(24)
「ライラの物(遺品)を入れた箱です。たくさんの思い出が詰まっています」
2022年、第2子を妊娠したクロエさん。しかし、お腹の中の赤ちゃんに脳が発達しない疾患があると判明。医師からは「生まれても数時間も生きられない」と告げられ、中絶の選択肢を示されました。
クロエさん
「赤ちゃんがお腹の中で発作を起こして苦しんでいると知り、中絶することに決めました」
しかし、中絶手術の数日前、予期せぬ事態が...
バイデン大統領(2022年6月)
「最高裁はアメリカ国民から憲法上の権利を奪った」

連邦最高裁が女性の中絶の権利を覆す判断を下したのです。トランプ前大統領が任期中に、保守派の判事を相次いで指名したためで、この判断を受け、保守派が優勢な州では次々と中絶が事実上禁止となりました。クロエさんが住むアリゾナ州でも州法が適応され、医師から「手術はできない」と告げらました。

クロエさん
「心が折れました。主治医の先生もとても悲しんでいました。誰もそんなことを患者に告げたくないですよね」
“中絶が合法な州”を探し、車で13時間ほどのコロラド州の病院で手術を受けることを決意。足りない手術の費用を集めるためSNSで寄付を募りましたが「赤ちゃんを殺すくらいなら自殺しろ」「おまえに母親になる資格なんてない」など、中絶に反対する保守派の人々が、クロエさんや病院を脅迫。手術を断念せざるを得なくなりました。
クロエさん
「娘を助けられず何もできなかったのが本当に本当につらかった」

クロエさんは約3か月後、赤ちゃんを出産。しかし、自力で呼吸をすることもできず44時間後、ホスピスで息を引き取りました。
クロエさん
「何もできないまま苦しんだ二日間は正気でいられなくて私も赤ちゃんも傷つきました。赤ちゃんが経験しなくていい、多くの痛みを味わわせてしまった」














