「オレが何とかしてやる」という気概
だが、近年の選手は個人種目で良い記録を持っていても、駅伝で悪い展開になったときに力が出せない。コニカミノルタが駅伝で低迷しているのも、そこに一因があったと宇賀地監督は感じている。
「実力、実績もなかったことが大きいのですが、思考の部分の準備、アプローチがやり切れていませんでした」
宇賀地監督が現役の頃は駅伝で想定より悪い順位でタスキを受け取っても、コニカミノルタの選手たちは「オレが何とかしてやる」という気持ちで走っていた。
「私たちより少し上の磯松(大輔、現トヨタ自動車九州コーチ)さんや坪田(智夫、現法大監督)さんたちの黄金時代は、『誰かが遅れてくたらオレが目立てる』というメンタルで駅伝に臨んでいたそうです」

黄金時代の選手・スタッフたちは指導者になっても実績を残している。磯松コーチはコニカミノルタの監督だったときにニューイヤー駅伝で2度優勝し、東洋大の酒井俊幸監督は箱根駅伝で3度優勝した。コニカミノルタでコーチだったトヨタ自動車・佐藤敏信総監督も、ニューイヤー駅伝でトヨタ自動車の監督として3回優勝。坪田監督、しまむらの太田崇監督、そして黄金時代のコーチだったJR東日本・大島唯司監督も、強豪ではなかったチームの成績を引き上げている。
強かった頃のコニカミノルタのメンタルを、宇賀地監督が現チームに根付かせられれば“21世紀駅伝王者”が復活する。
宇賀地新監督が重視する“責任”とは?
そのために宇賀地監督は「責任」という言葉を重視していく。
「選手、コーチたちに問いかけ続けてるところではあるんですが、1人1人がそれぞれの責任を果たすことが重要だと思っています」
練習メニュー、トレーニング方法決定プロセスが、1つのカギになるという。以前は指導者が“これをやるぞ”とメニューを示すことが一般的で、そういった師弟関係で世界的に活躍できた選手も多く現れた。だが今の選手が成長した社会的な背景もあり、そのスタイルでは難しい選手が増えているのも事実である。
その状況でも“責任”という言葉をチーム全員が考えることで、選手と指導者が一体となって力を発揮できるのではないか。宇賀地監督は指導方法について、熱心に語ってくれた。
「チームとして目指すべきところに対して、練習でクリアしてほしい水準、やってほしい練習は当然あります。しかし選手たちにもやりたい練習、試してみたいことがあるのも当然です。それらをしっかりディスカッションした上で進めていきます。選手が『やらされたからやりました』、スタッフが『言ったのにやらなかった』という形になったら、それぞれが責任を持てなくなってしまう。それは絶対に避けたいと思っています」

宇賀地監督はさらに、具体性を持たせて話を続けた。
「コーチたちはメニューを考えるとき、選手が目指すところに必要な内容を掘り下げて考えて、自信を持って渡せるようにしないといけません。渡したメニューにはこういう目的がある、としっかり説明する。今までこうやってきたから、ということは根拠にはしないようにしています。それに対して選手たちがこうしたい、と言ったときにはその理由を聞いて、選手とスタッフ双方が納得できるまで話し合う。あとは情報が多く得られる時代になっていますが、選手が本当に自分で考えて取り入れようとしているのか、そこは確認するようにしています。誰か(有名な選手や強いチーム)がそれをやっているから、という理由では、責任が外を向いてしまうんです。結果が良かったときはまだいいのですが、悪かったときに振り返りや分析ではなく、ただの言い訳の羅列になってしまうので。それは絶対に先につながりません」
宇賀地監督がやろうとしていることは、もしかしたら時間がかかることかもしれない。しかし“責任”を明確にする姿勢がチームに根付けば、上手くいかなかったときにも立ち直る術(すべ)になる。
もちろん東日本実業団駅伝では本気で8位を目指してタスキをつなぐが、その後のコニカミノルタが復活していく過程にも注目していくべきだろう。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)

















