【転落の4日間/2日目】 おかしいと気づき拒否するも脅され…
そして翌日の朝、Aさんの口座に5万円が入金されます。これは給料でありません。このお金を使って、仕事で必要なもの(ジャケット・ビジネスバック・プリペイドカード(10枚~20枚)・はさみ・封筒など)を買うよう指示されます。
そして、これを買い揃えている間に新たに番号が送られてきました。コンビニのコピー機で指定された番号を入力して出てきたのは、前日に自身が送った顔写真が入った、偽造の警察手帳。この瞬間、Aさんは「これはおかしい」と気づき、「やりません」とはっきり言いました。
そうすると「○○に家があるんだよね?」と脅されました。怒鳴ったりするのではなく優しい口調で「燃やすこともさらうことも」「親御さんに何があっても知らないよ」ということを言われたそうです。自分が殺されないために、そして親に害が及ばないために、“せざるを得ない状況”に陥ってしまいました。冷静な判断があればここで警察に行くべきですが、「警察にも話は通じている」などと言われ、警察に行くこともできませんでした。Aさんははこの時の状況を「八方ふさがりだった」と振り返ります。
次の日、プリペイドカード数枚を封筒に入れたものを準備するように言われ、それを持って指定の住所へ行きます。そこには70代後半の女性が。私服警官を装ったAさんにイヤホンを通じて逐一指示が出され、指示役が言った通りのことを女性に伝えます。
女性にはすでに「掛け子」から、キャッシュカードが不正利用されていると連絡しています。そこに、警官に装ったAさんが、女性が用意した複数枚のキャッシュカードなどを女性の目の前で封筒に入れます。そして、「しばらく誰も使わないように封筒に印鑑で封をしましょう」と女性に言い、実印を持ってくるように伝えます。その実印を取りに行っている隙に、Aさんが用意した同じ封筒とすり替えます。中身がすり替わっていることを知らない女性に、「不正利用の確認する間、絶対誰にも渡したり開けたりしないで」と伝えて封筒を返したということです。
その後、指示役から「すぐに出で銀行に行け」という指令が来たといいます。Aさんは車でATMへ向かい、キャッシュカードで現金を引き出します。口座に限度額の50万円以上があるものは50万円、50万以下のものは限度額の1000円単位まで引き出します。防犯カメラを警戒するAさんに、指示役は説得を行います。「金で警察は丸めこめる」「監視カメラも銀行に言って止めている」「もらうのは(相手が)不正に得たお金」などど、言葉巧みに納得させてきたと言います。