”役を生きる”ことを学ぶ

映画監督のナカムラサヤカさんは、今思えば明らかに依存症の患者だった家族がいたと気づきました。そこで「ギャンブル依存症問題を考える会」の田中紀子代表と協力して、依存症を考える短い動画を制作したりしてきました。

ナカムラサヤカ監督 ©Kazuhiro Okamoto.jpg

監督・脚本ナカムラサヤカさん:助監督として数々の映画に参加。主に佐々部清監督に師事。『FASHIONSTORY-Model-』(2012年)で映画監督デビュー。五輪公式映画『東京2020オリンピックsideA/sideB』ではディレクターの一人として抜擢。また、Amazon『バチェラー・ジャパン』シリーズやABEMA『LOVECATCHERjapan』でクリエイティブチームに参画するなどドラマだけでなく恋リアやドキュメンタリーなど様々なジャンルの演出を手がける。

今回は、様々な依存症を持っている人がゴスペルを歌うサークル、という設定で演技のワークショップを開きました。それを撮影した実験的な映画なのです。

ナカムラサヤカ監督:リアリティのある芝居を学びたくてみんなが来てくれて、「”役を生きる”ってどういうことだろう?」というテーマでワークショップをしていたんです。だから、33人それぞれが、自分のバックボーンとか、どんなことがあったか、そしてこれからどうなりたいか、自分のお母さんはどんなだったかとか、そういうことを全部考えて、実はワークショップに挑んでいるんですね。

ナカムラサヤカ監督:「4日間の間に1本の短編を作ろう」というところから、この映画の企画がスタートしました。撮り終わったものを見て、「ギャンブル依存症問題を考える会」の田中紀子代表から、「この映画、とても素敵なので、ぜひもう少し長くして劇場で公開できないですかね?」と相談されたので、「それでは」と前半部分を後から書いて、1本の映画にまとめた作品です。

出演者がそれぞれの役のバックボーンを考えに考え、議論して、そういったものが体の中にある中で、この場面を撮る時に、言葉、表情が出てくる。「役を生きる」という言葉がありましたが、そういうワークショップの学びの場から生まれた映画です。

逮捕歴ある俳優をあえて起用した思い

依存症の経験者をあえて起用するのは、今の日本の映画ではなかなか難しい現状があります。

ナカムラサヤカ監督:1人でも薬物とかで問題がある人が出演しちゃうと、上映中止になってしまう。そういう部分が映画界の中にあったんですね。私も田中さんも、すごく不満で、不服で。もう「私達が作るんだから、4人出しちゃおう」みたいなことで、実は出てるんです。もしかしたらどこも映画をかけてくれないかもしれないけど、やってみようと。

ナカムラサヤカ監督:イギリスのエルトン・ジョンとか、アメリカだとエミネムとか、ドラックやアルコールの依存症になったとしても、きちんと回復のステップを踏んでリカバリーした人には必ず手を差し伸べてくれる社会があるわけです。ブラッド・ピットが回復のステップを踏んでいるんだとは多分なかなか知られていないと思うんです。でも海外にはそういう文化がちゃんとあって、「日本にも広めていきたい」ということも含めて起用しました。

福岡市のキノシネマ天神での上映が先週末から始まったので、土日は監督の舞台あいさつがありました。その時のお話をお聴きいただいています。

依存症は「孤立の病」とも言われます。映画のセリフで非常に印象に残ったのは、「自分が自分のこと好きになれなかったからだろ。アディクトになるってさ」というものでした。ひとの心の隙間に忍び込んでくる依存症。依存しないと耐えられなくなる。

無理解な世間の厳しい声

そして、孤立が多くの人の原因になっているケースがある。ですから、高知さんたちは、きちんとした更生プログラムを受けていて、同じ立場の人たちで助け合いながら生きています。その様子をワークショップで演じている、という形です。