エース新谷はヒューストン・マラソンへスピードを再確認

大会最終日(3日目)の女子5000mでは、新谷が日本人トップの3位に入った。横田真人コーチは事前取材で15分ヒト桁が目標と話し、新谷は15分14秒18で走った。目標から大きく後れたわけではない。

だがレース後の新谷は「惨敗だったと思います」と、相変わらす自身に厳しかった。
「マラソンでもう一度日本記録(2時間18分59秒)にチャレンジするには、今の時点で5000mを15分フラットで走る必要がありました。そのための練習を横田さんに組み立ててもらってやってきましたが、あまり練習の成果を発揮できませんでした」

プレビュー記事でも触れたが、新谷のマラソンはスタミナではなくスピードがベースとなる。来年1月のヒューストン・マラソンから逆算し、4カ月前の9月には5000m3分00秒前後のスピードを体に覚えさせる。

全日本実業団陸上でも新谷は、ケニア人選手たちのペースが落ちると自ら前に出た。風も受けることになるなど、勝負を考えれば不利になることもある。それでも新谷は「トップに出ることを私は勇気だとは思わない」と平然と話す。

「自分のターゲットがあるのであれば、そこに向かって全力で立ち向かうのは、36歳でもなんでも変わりません」11月のクイーンズ駅伝での目標も明確だ。「今回の5000mみたいな形で、スピードのリズムに乗りながらマラソンに繋げていこうと思っています」

過去4年間、新谷は3区(区間1位)・5区(区間2位)・3区(区間1位)・5区(区間2位)と10km区間を走ってきた。マラソン2カ月前には10kmの区間でスピードを確認することになる。そして本人が話しているように、新谷が目標を決めたらその目標より低いスピードで走ることは絶対にない。区間賞を目指して走ることになるだろう。

駅伝の勝敗はトラックの実績だけで決まるわけではないが、駅伝の勝敗に大きく影響するのは事実である。「選手個々がやりたい種目で輝くチームにする」(野口監督)のが積水化学で、新谷と卜部が加入した20年以降で2度の駅伝優勝を達成している。積水化学が今年も、クイーンズ駅伝の優勝候補筆頭に推されることは間違いない。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)