「最低賃金」異例の84円上げ 背景には、自治体のし烈な争いも

2023年までは目安額と同じか、プラス1円の上げ幅だった徳島県。それが2024年は目安額の50円を大きく上回る84円の引き上げで、最低賃金が980円となる。

――わずか数年の間に200円近く上がった。今回徳島県の場合は、自分たちの県が実際どれくらいの経済力があるのかをもう1回考え直してこれだけ上げたという。

第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生氏:
実力に合わせて上げるということはそれなりに良いことだと思うが、少しやり過ぎだと私は思う。(引き上げ額の)84円はパーセンテージで言うと9.3%。これまで3%ずつ上がっていたものを急に9%にすると、事業者が悲鳴を上げる。無理をしたのではないかと感じる。

最低賃金引き上げの背景には各県ごとのこの人材不足・人材獲得競争がある。都道府県ごとの最低賃金の順位が出ている。上位は東京、神奈川、大阪となっているが、徳島は、2023年は45位だったが、27位に急上昇している。そして最下位は秋田県の951円。そして1円上回る952円は5県(岩手・高知・熊本・宮崎・沖縄)が並んでいる。

――どの県も自分たちの県だけが最下位にはなりたくないという思いがある。後出しじゃんけんした方が勝ちみたいなところがあり、今年は秋田県が単独最下位になった。昔と違って人々の移動がかなり楽になっているので、各県ごとの人材獲得競争は激しくなっているのか。

第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生氏:
特にパート・アルバイト、若い人たちは獲得競争の対象。飲食店などは、最低賃金が上がる時給が上がると、事業者にとっては非常に苦しい状況だと思う。

――最低賃金を上げるということは、国ができる数少ない有力な賃金引き上げの手段なので、今後も上げていくことは必要か。

第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生氏:
それは必要で、3%ずつ一定に上げることは合理性があると思う。一方で地域格差も考えるべきだ。例えば最下位の秋田県だが、最も高齢化率・65歳以上の比率が多く、年金生活者が主な客なので、人件費を上げて値上げをする、生産性を上げるということは難しい。一律にやると事業者は困るのではないか。

(BS-TBS『Bizスクエア』 9月21日放送より)